五郎丸歩「選手としての海外挑戦は失敗」―その経験を糧にスタッフとして新プロリーグに挑戦する現在
海外経験を活かして、クラブと共に日本のラグビーの世界観を創造したい
――言葉の問題はどうしましたか。 1日、2日で語学力がつくなんてありえないですから、環境に慣れていくしかない。でも、言葉が違っても、結局その人の人間力で仲良くなるということがわかりました。また、当たり前ですけど、積極的に自分からしゃべっていかないと伝わらない。完璧な英語をしゃべらないとダメだろうと最初は思うじゃないですか。照れもあるし、言いたいことはあるけど我慢したり。けれど文法や単語が多少間違っていようが、コミュニケーションを取ることが大事なんです。フランスはすごくおもしろいですよ。英語で話しかけると、英語で返ってくるかと思いきや、フランス語で堂々と答えてくる。表情や身振り手振りもありますし、何となく通じてしまうんですね。 それと、外国人のメンタルは見習うべき点が多い。たとえば日本人選手は、毎日きつい練習をしているから、朝、練習場に入ってきても浮かない顔。ところが外国人選手は、「グッモーニン!」とすごく楽しそうに来るわけです。同じ時間で同じ環境を与えられているのに、なぜ、こんなにポジティブで明るいのか。チームメイトの外国人から非常にいい影響を受けましたね。 ――海外経験が現在の仕事におおいに生かされているそうですね。 今回の新リーグ開幕にあたっても、南半球と北半球、本場のラグビーで得た経験や知識が存分に生かされていると思いますし、日本に留まっていたら気づかなかったことも多い。たとえば、海外ではキックを蹴るときは、アウェーだとものすごいブーイング。楽器を使って応援しますし、やたらにぎやか。日本の観戦マナーは静かに見なきゃいけないとされているから、真逆です。 けれど、その国ごとのラグビー文化はあっていいでしょう。観戦マナーひとつとっても、選手とファンが一緒につくってきた歴史があるわけですから、日本は日本で、独自のラグビー文化をつくっていけばいいと思うんです。 現在、チームのフロント業務をしていますけど、「つらいことないんですか?」と記者の方から質問されたり、しんどそうだと見られがちなんですが、非常に楽しいです。13年間お世話になった現クラブに忠誠心がすごくありますし、これまでにないチームカラーを静岡ブルーレヴズのみんなと作り、いかに運営面でバックアップしていくかに大きなモチベーションを感じますね。 2022年1月にラグビー新リーグ「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」が開幕。多くの人に愛してもらうきっかけになるでしょうし、日本のラグビーの世界観を創造していく絶好のタイミングになると考えています。