覚醒したパワートレインへ舌を巻く マクラーレン・アルトゥーラ 750Sより魅力的? 長期テスト(5)
750Sと乗り比べ 乗り換えたいと思うか?
そんな折、マクラーレン750Sへ試乗する機会が巡ってきた。アルトゥーラと、連続して乗り比べることもできた。とても興味深い比較といえた。 4.0L V8ツインターボが載る750Sの最高出力は、750ps。アルトゥーラより格上のモデルといえるが、秘めた能力は公道で開放できる水準を遥かに超えている。実際、安全に楽しめる範囲で比べると、違いはそこまで大きくないといえる。 それでも、車重は750Sの方が100kg以上軽い。ステアリングの反応は鮮明で、回頭性はより鋭い。ドライビング体験は一層ピュアで、鮮烈なものといっていい。しかし、英国価格には6万ポンド(約1200万円)の開きがある。 仮に大きな価格差がなく、筆者が本当のオーナーだとして、750Sへ乗り換えたいと感じたのか? 恐らく、アルトゥーラでいいと答えるだろう。比較すればしなやかな乗り心地や、上品なサウンド、早朝に無音で発進できるという特長を、高く評価しているから。 アルトゥーラには、ずっと乗っていたいと感じさせる魅力がある。しかし、悲しいかなこれは長期テスト。マクラーレンへお返しする期限は日に日に迫っている。残された時間を、堪能しなくては。
積算9476km 普段使いで大切なヒーター
マクラーレン・アルトゥーラが得たハイブリッドシステムで、最も見逃されがちでも、有用な機能といえるのがヒーターだ。エンジンが温まる前に、冷えた車内を暖められる。早朝に上着を着て乗り込んでも、2分後には発進前に脱ぐべきだったと思うほど。 フロントガラスのデフロスターも優秀。スーパーカーにとって、些細な機能に思えるかもしれないが、普段使いするうえでは極めて重要なことだろう。
積算9646km 回生ブレーキは備わらない
マクラーレンは、ブレーキペダルの感触に影響が生じる可能性があるとして、アルトゥーラへ回生ブレーキ機能を実装しなかった。シリアスな運転体験を提供したいという、同社の意志が現れている。 だが同時に、限られた駆動用バッテリーで得られる航続距離は短くなってしまう。どの程度感触が変わるのか、筆者は想像するしかない。だが、些細な変化でもマクラーレンは許せなかったのだろう。
テストデータ
■気に入っているトコロ 覚醒したパワートレイン:マクラーレンへ期待通りの速さがついに開放された。 ■気に入らないトコロ シートセンサー:助手席へ買い物袋を置くと、人間と誤認してシートベルト着用の警告が鳴ってしまう。 ■英国価格 モデル名:マクラーレン・アルトゥーラ(英国仕様) 新車価格:18万9200ポンド(約3784万円) テスト車の価格:22万1400ポンド(約4428万円) ■テストの記録 燃費:10.4km/L 故障:クルーズコントロール用レバーの交換/フロアシールの交換 出費:なし
アンドリュー・フランケル(執筆) 中嶋健治(翻訳)