改名後初白星!祖父のしこ名継ぎ「琴桜」50年ぶり勝ち名乗り…敬意払うも「別に変わらない」自分らしく歩む
◆大相撲 ▽夏場所2日目(13日、東京・両国国技館) 琴ノ若から改名した大関・琴桜(26)=佐渡ケ嶽=が初勝利を挙げた。東前頭筆頭・熱海富士(21)=伊勢ケ浜=を肩透かしで下した。「琴桜」の白星は、元横綱の先代・琴桜が現役最後の白星を挙げた1974年春場所14日目(3月23日)以来、50年ぶりとなった。初日から1横綱4大関総崩れとなった今場所。その上、この日から横綱・照ノ富士(32)=伊勢ケ浜=、大関・貴景勝(27)=常盤山=が休場した中、偉大なしこ名を継いだ大関が主役の座を狙う。 半世紀ぶりに土俵上で響いた「琴桜」の勝ち名乗りに、館内のファンからは万雷の拍手が降り注いだ。琴桜はそれを背中で受けながら、悠然と花道を下がった。取組は危なげなかった。鋭い踏み込みで熱海富士の出足を止め、右をのぞかせた。すかさず右へ体を開くと、足のそろった相手を肩透かし。21歳のホープをわずか1秒5で片付けた。 偉大なしこ名を受け継いで初の白星となったが「別に変わらないです」と冷静に語った。内容についても「集中していけた」と淡々。それでも、父で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)が「初日は硬かった」と評した初日黒星の悪い流れを引きずることはなかった。 少年時代、生前の祖父に「いつになったらしこ名をもらえるの?」と尋ねると「大関になったらいいぞ」と返された時からの固い約束。父から継いだ「琴ノ若」を大関にしたい思いで新大関場所は改名せず、満を持して今場所から襲名した。 それけだけに大きな敬意を払う。一方で「(しこ名は)もらった時から自分のもの。『先代が』とか『昔の人が』とか、そこにとらわれて、自分らしくないのが一番良くない」とも話す。偉大なしこ名であることに変わりはないが、より自らのものとしていく構え。この白星で第一歩をしるした。 八角理事長(元横綱・北勝海)は「琴桜の下半身が乱れなかった。足腰の力の違い」と分析した。今場所は1横綱4大関が全て敗れる大波乱の幕開け。出場した5人以上の横綱、大関陣の総崩れは初日に限れば昭和以降初のことだった。さらに2日目からは横綱・照ノ富士、大関・貴景勝が休場。番付の権威が揺らぎかねない事態の中、琴桜に奮起が期待される。それでも大関は「自分がやるべきことをやるだけ。人がどうとかは関係ない。明日は明日で集中して。同じ気持ちで臨んでいくだけ」と表情を変えなかった。泰然自若の精神で臨み、初賜杯を狙う。(三須 慶太) ◆初日1時間半で完売人気「琴桜弁当」1250円 今場所初日から国技館内の売店で琴桜がメニューを考案した「琴桜弁当」が販売されている。価格は税込み1250円。好物のガーリックライスや豚肉と野菜の炒め物に加え、父で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)の出身地・山形の郷土料理、玉こんにゃくも入っている。力士弁当は横綱、大関のみが考案できる特権で、人気をはかる一つの指標になる。国技館・東1階の売店によると、初日は他の力士弁当と比べて2倍の在庫を用意。午前11時の販売開始からわずか1時間半で完売したという。琴桜の人気と注目の高さがうかがえた。
報知新聞社