マッケンロー vs 錦織圭――ドリームマッチが実現した背景と夢の「これから」
3年近く前、香港で行なわれたテニスのエキシビション・イベントを取材に行ったとき、出場していた元王者ジョン・マッケンローは日本人関係者に「なぜ日本には来てくれないのですか?」と尋ねられ、こう返した。 「君たちが僕を呼ばないからだ」 なるほどその通りで、公式戦ではないのだから彼らは自ら進んで出場しているわけではないのだ。招待するには相当な出演料がかかるだろうから、今の日本では無理だとあきらめたものだ。 しかし、そのマッケンローが16年ぶりに日本にやって来た。 そして秋晴れの日曜日、東京の有明コロシアムで『日清食品ドリームテニス』という、錦織圭とのエキシビションマッチをメインとした東日本大震災の復興支援事業チャリティーイベントに参加。このイベントには震災のあった一昨年に始まったもので、その年は元世界2位のマイケル・チャン、昨年は元世界1位のレイトン・ヒューイットを招いている。過去2回もビッグネームだが、グランドスラム優勝7回を誇るマッケンローは“悪童”と呼ばれた独特のキャラや天才的なタッチで魅せるプレースタイルで現役時代から絶大な人気があり、引退後の解説者としての活躍も含めて54歳の今なお知名度の高い世界的なスーパースターである。 そんな大物を、常に資金不足を嘆いている日本テニス協会がなぜ呼べたのか……もったいぶっておいて申し訳ないが、実は単純な話で、テレビのお正月番組の収録に便乗したのだそうだ。つまり、招待費用が大幅に省けたということである。 とはいっても、滞在を延ばして一日がかりのイベントに参加してもらうのは簡単なことではない。実現したのは、これがチャリティーだったからだ。マッケンローは「チャリティーということでまた日本に来るいい口実になった」と、彼らしい言い回しをしながら、「僕にはテニス以外に被災地の人々にメッセージを伝える術がない。こうして再び日本でプレーすることで支援できるチャンスを得たのはうれしい。悲しいことに、災害は世界のいろいろなところで起こっているが、世界中が皆さんのことを気にかけているということを忘れないでほしい」と、クールな顔で熱い思いを届けた。その思いが参加を促したのだ。