マッケンロー vs 錦織圭――ドリームマッチが実現した背景と夢の「これから」
また、忘れていけないのは、マッケンローほどの人物との試合を成り立たせる錦織圭という存在があったこと。今季トップ10入り目前まで迫った錦織への視線は日本だけでなく世界から注がれ、マッケンローも「ケイはスピードが大きな武器。さらにメンタル面で大きな成長を遂げたと思う。ケガの回復に時間がかかった部分もあるが、それを差し引いても非常に成長した。より攻撃的なプレーで次の段階にステップアップしてほしい」と今回あらためてエールを送ったほどだ。 イベントスポンサーである日清食品は錦織のパーソナルスポンサーでもあるから、やはり錦織の貢献があってこそのイベントであり、マッケンローの参加であったことに異論をはさむ余地はない。マッケンローが日本のオールドファンを再び有明に連れ戻し、錦織が若いファンを呼び込み、この日は観客1万の満員御礼となった。 マッケンローは、久々に日本の観客の前でプレーして「お客さんはとてもエネルギッシュで反応も良かった」と印象を語ったが、お世辞ではないだろう。公式戦では「おとなしすぎる」とか「ため息が目立つ」と言われることも多い日本の観客だが(ため息に関してはクルム伊達公子の発言で大騒動になったが、それ以前から似たような指摘はあったのだ)、エキシビションでは日本のファンの観戦スタイルは非常によくマッチする。 真剣勝負だとマナーを意識しすぎたり、地元選手に入れ込んだりしすぎるようだが、こうした試合では自然にいいムードを作れる。選手への敬意と気遣いが感じられるマナーは忘れず、それでいて選手のおふざけには大いに笑い、歓声をあげる。 こんなに盛り上がるなら、日本でももっとエキシビションやシニアイベントを開催すればと思うが、ことはそう簡単ではないらしい。要は、儲からないのだという。今回、入場料はコートサイドの一番いい席で7000円、続いて5000円、コートからもっとも離れたところで3000円だったが。チケット収益だけで4000万円くらいになるはずだが、日本テニス協会理事の川廷尚弘氏によると、主催する日本テニス協会にはあいにく「1円も入っていない。スタッフは全員ボランティア」だそうだ。スポンサー料も含めた収益からあらゆる運営費を除いた全ては寄付に充てている。