マッケンロー vs 錦織圭――ドリームマッチが実現した背景と夢の「これから」
テニスがこれだけ世界的人気を博し、グランドスラムが毎回賞金を吊り上げ、スポーツ史上最高額の記録さえ塗り替えながら、こうしたイベントがスタンド満員にしても儲からないものだとは……。 それでも、「復興支援は続けることに意義がある」(川廷氏)という志で3年間続けてきた。もちろんファンは来年にも期待している。ただ、マッケンローの翌年に果たして誰にオファーするのかという声がちらほら上がっている。「(ステファン・)エドバーグくらいでないとお客さん納得しないよね」とある協会関係者はつぶやいた。確かに、往年のプレーヤーに限ればそうかもしれない。だが目線を変えて、現役選手という手もある。錦織VSフェデラー、錦織VSナダル、錦織VSノバク・ジョコビッチ……無謀な話ではない。オフシーズンは世界のあちらこちらでトッププレーヤーを招待したエキシビションマッチが目白押しなのだから。 錦織対マッケンローはとても愉快な試合で、最後に行なわれた錦織/松岡修造VSマッケンロー/鈴木貴男というダブルスもクオリティの高いエンターテインメントだった。錦織は「思ったよりボールは伸びてきてびっくりした。勝ててうれしい」と言ったが、さすがに54歳が相手では本気度を抑えていたはずだ。見ているほうも、勝負の行方はどっちでもいいというところはある。しかし相手が現役トップなら勝負も楽しめるし、今の世界のトップクラスのプレーも堪能できる。今回とは違ったイベントになるだろう。 公式戦を減らす方針のフェデラーはもう日本の大会には出そうもないし、ジョコビッチは日本でプレーしたこともない。エキシビションならどうなのだろうか。ジョコビッチに関しては、ウェアスポンサーは錦織と同じユニクロなのだし、なんとかうまい具合にアレンジできないものか。思いついたことを言っているだけなら楽だよねと当事者たちに怒られそうだが、〈ドリーム〉を実現できる立場にある人々へ、ファンに代わって夢の続きを語っているものとしてお許しいただければと思う。 (文責・山口奈緒美/テニスライター)