Amazonが仕掛ける“新・映画ビジネス戦略”とは 『レッド・ワン』が北米で好評を得た理由
Amazonが仕掛ける、これまでにない映画ビジネスとは
ならばAmazonは、いかに映画ビジネスを成立させようとしているのか。劇場公開が『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』と同等のスタートでも、製作費2億ドル以上の大作を成功に導くための作戦とは――。 Amazon/MGMの劇場配給を統括するケヴィン・ウィルソンは、ホリデーシーズンの話題作と『レッド・ワン』はビジネスとして別物だと強調する。「好まれるかどうかは別として、映画の価値はビジネスモデル次第で異なる」と。Amazon/MGMの戦略は、“広報・宣伝費だけでも劇場公開で回収できればよし”というもの。それ以上の収益は、Amazonプライムに会員登録してもらうなり、世界最大のショッピングサイトであるAmazon本体で関連商品を売るなり、配信リリースのタイミングで広告枠を販売するなりすればよい。 こうしたビジネスのスケール感は、たしかにAppleやNetflixといった競合とは大きく異なる。一時期のAmazonは中規模作品に注力していたが、『レッド・ワン』のようにファミリー層を視野に入れた大作映画ならば、狙える収益の規模はより大きくなるだろう。 なお、『レッド・ワン』は日本を含む海外75市場では11月8日に先行公開されており、現時点での海外累計興収は5000万ドル(海外配給はワーナー・ブラザース)。全世界興行収入は8407万ドルだから、広報・宣伝費の1億ドルを回収するにはまだ先がある(少なく見積もっても世界興収2億ドルは必要だろう)。 Rotten Tomatoesでは批評家スコアこそ33%と渋い数字だが、観客スコアは90%。劇場の出口調査に基づくCinemaScoreでは「A-」評価と、やはり観客支持は上々だ。クリスマス映画とあって、うまくいけば、ホリデーシーズンの真っ只中まで集客を維持するポテンシャルはある。Amazonの仕掛ける新・映画ビジネスは良い成果を収められるか? ■北米映画興行ランキング(11月15日~11月17日) 1.『レッド・ワン』(初登場) 3407万ドル/4032館/累計3407万ドル/1週/Amazon・MGM 2.『ヴェノム:ザ・ラストダンス』(↓前週1位) 735万ドル(-53.8%)/3421館(-484館)/累計1億2760万ドル/4週/ソニー 3.『The Best Christmas Pageant Ever(原題)』(→前週3位) 540万ドル(-49.9%)/3020館(変動なし)/累計1995万ドル/2週/ライオンズゲート 4.『Heretic(原題)』(↓前週2位) 516万ドル(-52.3%)/3230館(+9館)/累計2043万ドル/2週/A24 5.『野生の島のロズ』(↓前週4位) 430万ドル(-35%)/2894館(-157館)/累計1億3777万ドル/8週/ユニバーサル 6.『Smile 2(原題)(↓前週5位) 295万ドル(-42.3%)/2462館(-360館)/累計6565万ドル/5週/パラマウント 7.『Conclave(原題)』(↓前週6位) 285万ドル(-30.9%)/2377館(+94館)/累計2655万ドル/4週/Focus Features 8.『Hello, Love, Again(英題)』(初登場) 232万ドル/248館/累計232万ドル/1週/ABR 9.『リアル・ペイン~心の旅~』(↑前週18位) 230万ドル(+680.6%)/1185館(+1173館)/累計303万ドル/3週/サーチライト・ピクチャーズ 10.『ANORA アノーラ』(↓前週7位) 183万ドル(-27%)/1500館(+396館)/累計1050万ドル/5週/Neon (※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2024年11月18日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります) 参照 https://www.boxofficemojo.com/weekend/2024W46/ https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/red-one-box-office-opening-1236063802/ https://variety.com/2024/film/box-office/red-one-box-office-opening-weekend-disappoints-dwayne-the-rock-johnson-1236212370/ https://deadline.com/2024/11/box-office-red-one-dwayne-johnson-chris-evans-1236177871/
稲垣貴俊