「東洋のスイス」の老舗メーカーが生んだ新ベンチャー/金属分析から高級トマト栽培まで~小松精機工作所 前編
◆諏訪ブランドの強みも
次に「人材面」。 小松精機は、当然自社のカラーに合った人を採用してきた。 顧客が理想とする図面を、精微に具現化していく職人のような技術者は、小松精機では力を発揮できる。 一方で、新製品の販売も行う会社のカラーには違う人材が必要で、小松精機との距離も必要だという。 実際、ヘンリーモニターに小松精機出身の社員は、小松さん以外にいない。 これまでの出会いを生かして、一本釣りした人や、他社からの転職、高校の同級生で構成している。 3つ目はファイナンス面での理由だ。 ベンチャービジネスは、資金を外部から集めてこなくてはいけない。 出資を募るのは、会社を上場させるなど出資者に利益があるゴールが必要だ。 ならば、社内の1部署より、独立した形の将来を描ける新会社の方にメリットがあるという。 ちなみに、ヘンリーモニターの本社は今も諏訪市にある。 地方都市に地の利がある面もあり、かつて「東洋のスイス」と呼ばれた諏訪ブランドは、今なお国内外問わず一定の信頼性がある。 また、多くのベンチャーが競合する都市圏と異なり、地方都市では存在の認知に時間を割く必要がないという。
◆ヘンリーモニター創業から3年、高級トマトも栽培?
創業から3年、磁界式センサーを主軸とするヘンリーモニターは、どのような展開を見せているのか。 磁界式センサーは、金属加工品や土壌の分析に力を発揮する。 小松さんは、顧客のニーズが当初想像していたよりも質的に高いレベルにあると感じている。 特にワイナリーなどの顧客は「安心・安全」を求めるため、高い精度での土壌検査が求められることが分かったという。 このため、土壌検査をする現場が必要となり、八ケ岳山麓の長野県原村で、トマトのハウス栽培を開始した。 実際に「高級トマト」として販売も行い、土壌検査の有効な実証となっている。 また、出資や借り入れによって財政基盤も整い、潜在的な顧客とのつながりもできはじめた。 今後は、顧客開拓や磁界式センサーの販売、サービスの提供というフェーズに入る。 小松さんは「これからどんどん伸びていくという手応えを感じている」と話す。