即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
新車納期の長期化が話題になったのは少々前だが、現状でも以前より納期が長くなっていることは変わらない。どうしてこのようなことが起こるのか?今回は納期の不思議に注目し、それに関連する疑問を考えていこう。 【画像ギャラリー】納期が長い理由をもっと見る(11枚) 文/長谷川 敦、写真/スズキ、トヨタ、写真AC、Adobe Stock、アイキャッチ画像/kegfire@Adobe Stock
■納期が長くなってしまったのはなぜ?いつから?
以前は新車を注文すると、それが納車されるまで通常は1カ月くらい、長くても2カ月程度なのが一般的だった。 しかし、現在では実際の納車まで1年以上待ちなどのケースも決して珍しくなく、こうした長納期化が発生したのは2020年からといわれている。 2020年といえば、新型コロナウイルスの流行によって人々の行動が大きく制限された年であり、これによって多くの産業も打撃を受けた。 特に半導体業界は、工場の休止などによって生産数が減ったことに加えて在宅ワークの常態化や、自宅で過ごす時間が増えたことでのパソコン需要増加もあり、必要数に対して供給量が大きく足りない状況になった。 現在のクルマにも半導体が多用されているため、半導体不足が解消されないかぎり自動車の生産台数に制限がかかってしまう状況に陥ったのだ。 そんな2020年から4年が経過して新型コロナウイルスの脅威も減少しつつあるが、今度は2022年2月にロシアがウクライナへの侵攻を開始し、両国の戦争状態はこの原稿を書いている2024年11月の時点でも続いている。 ロシアとウクライナは半導体の原材料や製造用のガスなどを供給している国であり、両者の状態はやはり半導体の製造に影響を与えている。 さすがに一時期の新車2年待ちといった状況は現在緩和されているが、依然として納期が長めなのは変わっていない。
■納期が決まるまでの流れ
ここからは、メーカー系ディーラーを例に、新車の納期がどのように決められるのかを見ていくことにしたい。 ●販売店での注文 カタログなどで検討し、場合によっては試乗を行ってから購入する車種を決定するのが一般的だが、なかには最初から"決め打ち"で購入車をチョイスする人もいる。 そして通常はディーラーの販売員と商談を行って購入契約という流れになる。 購入の際にそのクルマのグレードやボディ&内装のカラーを選び、オプションパーツを最初から装着するのであればその選択も行う。 これで購入するクルマの仕様が決まるわけだが、比較的標準に近い車体を注文した場合、メーカーにその在庫があれば短時間で納車されることもある。 しかし、ほとんどのケースで仕様が決定してからメーカーの工場で納入する車体が準備される。 ●メーカーでの生産 工場に車体のストックがあればそれを注文どおりに仕上げるだけなのだが、近年では完成車の在庫がないことも多く、すでに受注しているクルマの生産が先に進められるケースがほとんど。 特に数カ月以上の納期になる人気車では、希望するクルマが受注時点でまだ影も形もないなどということもある。 つまり、納期が遅れるほとんどの理由は、資材不足やその他の要因により、受注に対して生産が追いつかないということ。 メーカーでも資材の調達や生産工程の見直しなどによって工期短縮への努力を続けているものの、たくさんの会社や人が関係するクルマの製造は1社のがんばりだけではどうにもならないことが多い。 必要な材料が揃ったら加工や組み付けを行い、メーカーオプション装着もここで実施される。 こうして完成したクルマは、各ディーラーの元へと送られる。 ●輸送と登録 工場を出た新車は、陸送や船便などで全国各地のディーラーへと輸送されるが、この工程でもある程度の日数を要する場合がある。 それでも日本国内であれば、工場出荷からそれほど間をおかずにディーラーに到着する。 新車を受け取ったディーラーでは、そのクルマの登録やナンバープレートの装着などを行い、そのまま購入車に渡すのではなく、一度自社に持ち帰る。 最終的に購入車に引き渡す前にディーラーで点検を実施し、さらに販売店オプションの装着を行うこともある。 ●納車 点検を含めたすべての準備が終わるとついに納車となる。 納車はディーラーの店舗で行う場合もあるし、ディーラーのスタッフが購入者の自宅までクルマを届けるケースもある。 そして新車とそのキー、書類を渡せば晴れて納車完了となる。 納期が長いクルマなら購入者の感激も大きくなるし、ディーラーのスタッフにとっても「ようやく渡せた」と、肩の荷が下りる瞬間だろう。