各国の思惑が交錯、AI規制はどうなる?欧米の有識者に最新動向を聞いた 安全管理をテーマに初めて開かれた国際会議
▽規制に従うのは「善人」だけ イギリスのコンサルティング会社プロフュージョン・メディアは、AIやビッグデータを活用した分析手法を企業に助言している。航空会社の需要予測の的中率を20%向上させた実績もあるという。同社のアリステアー・デント最高戦略責任者は、規制を受ける立場からAI規制の意義を説明した。 「AIが社会にもたらすリスクは2種類ある。利用者の指示で文章などを作り出す生成AIは多くの間違いを犯す。間違っているのに、もっともらしい回答をする。業界はこうした事象を『ハルシネーション(幻覚)』と呼ぶことに熱心だが、実際にはエラーだ。利用者は生成AIの回答と、自分で意思決定する際の判断を分けて考えないといけない。もう一つのリスクは生成AIが誰の手にも渡るという事実だ。強力なツールにもかかわらず、ならず者の利用を防ぐことはできない。『善人』を規制できても『悪人』は規制を気にしない」 「大企業は利己的な理由で規制強化を求めている。自社のAIツールを競合他社より倫理的なものにすれば、競争に勝てる可能性があるからだ。競合相手と条件が対等になることを望んでいる」
「GDPRが発表された時、みんな意図しない結果がもたらされるのではないかと心配したが、実際にはウェブサイト上で(利用履歴収集に使われるクッキー取得に同意を求める)迷惑なポップアップが表示されることを除けば、肯定的に受け止められている。GDPRは必要以上のデータを取得してはならないとされている。企業側はデータ保存のコストを抑えられ、将来の訴訟リスクからも守られる。AI規制も実際には善人だけが対象になるとしても規制を設けることには意味がある」