【#佐藤優のシン世界地図探索59】岸田政権の「部族支配」、その向こうに見えてきた『岸田忠臣蔵』
佐藤 だから、ここは忠臣蔵の世界で考えればいいんです。 ――今、秋葉城代家老があるから、岸田殿様はなんとかなっている。 佐藤 そう、だから、外交はなんとか持っています。しかし、内政に関してはそういう人がいないわけですよね? ――吉良上野介(きらこうずけのすけ) が団体となっている安倍派が、すさまじい暴声を発しています。 佐藤 だから、犬公方の家綱将軍の時の、柳沢吉保(よしやす)みたいな人物が必要なわけですよ。 ――誰かそんな人はいないのですか? 佐藤 なかなか大変そうだから、みんなやらないんですよ。 ――外国との戦争が今、日本で起きていないのは......。 佐藤 外交担当の秋葉城代家老がいるから、そこは大丈夫です。ただ内政にそういう人がいないために混乱が起きています。 ――もう、岸田殿様は抜刀して斬りまくっていますからね。派閥は斬られ、安倍派五人衆も斬られた。 佐藤 殿が刀を振れば、その通りになるわけです。 ――納得しました。「出(い)でよ、柳沢吉保になる官僚! いや、家来の衆の皆様、おねがいします!」でありますね。 佐藤 柳沢吉保の横には荻生徂徠(おぎゅうそらい)みたいなブレーンもいましたからね。 ――もうひとり賢者が必要なんですか! 佐藤 そう思います。忠臣蔵で四十七士が吉良の首を打ち取ると、徳川家綱も「あっぱれ」と称えました。すると、荻生徂徠が柳沢吉保に「この義は赤穂藩における義でございまして、国家全体には大変な謀反にございます。小さな義のために国家を崩してはいけませぬ」と上申したわけです。 そして、柳沢吉保は総合的に判断して、赤穂浪士47人に切腹を命じました。ここで殺しておけば神話になります。だから、彼らのためにもなると。そして、ああなりました。 ――すると、そのふたりこそが、今、皆大好きな『忠臣蔵』の原作者なんですね。 佐藤 そうですね。 ――だから、お家を守る、そんな感じなんでしょうね。 佐藤 ポピュリズムに流されない、そういう感覚の人がいないとダメなんですよね。 ――ただ今は、岸田殿様が突然、伝家の宝刀である『衆院解散総選挙だ』と抜刀すれば、それこそ自民党全員は討死にとなってしまうのか......。 次回へ続く。次回の配信は2024年5月31日(金)予定です。 取材・文/小峯隆生