【#佐藤優のシン世界地図探索59】岸田政権の「部族支配」、その向こうに見えてきた『岸田忠臣蔵』
佐藤 外交官の仕事がなんなのかというと、「戦争に我々が巻き込まれないこと」ですよ。それは、殺す側も殺される側もいけないし、国民が殺す側に回るのも殺される側に回されることもダメです。 それから、負け戦には関与しないということも最低線で一致できるはずです。だから、ウクライナみたいに自分から負け戦に突っ込んで行こうとするのは、私の理解を超えたことなんです。 ウクライナ戦争に関しては最初から言ってるように、米国の組み立てでは、ウクライナは勝てないことになっています。だから、これに参加したって意味はありません。米国はロシアとはベーリング海で、海を介してしか国境線が接していません。だけど、ウクライナは、直接陸地でロシアと接しています。 一方日本は、ロシアのガスへの依存はますます高まっていて、戦争当初は8%だったのが、今は10%になっています。もしも突然、ロシアが対日輸出を止めるとすれば、今年の夏の冷房設定の最低温度が32度くらいになると思いますよ。そうしたら東京だけで数千人単位が熱中症で死んでしまいます。 国家の仕事とは何かと言うと、国民の生命・身体・財産を守ることです。もしそうなった際には、代替エネルギーが時間をかけて米国から来ることになるはずです。しかし、ドイツはロシアから買っていた天然ガスを4倍の値段で米国から購入しています。だから、ドイツ経済は今、すさまじく疲弊してしまいました。 日本は、ただでさえ円安が進んでいる現状で、外貨をもっと使って米国からエネルギーを購入するとなると、ますます貧しくなります。そんな選択をして良いのでしょうか? 改めて言うと、国益は国民の生命・身体・財産を守ることです。 ――すると、権力を握っている方が今、家産主義にならないとやっていけないのですか? 佐藤 それは国際情勢の変動が激しいという客観的な要因もあります。すぐに決定しないといけないため、民主的な手続きは取れないし、法律を厳格に守っていると、状況に対応できなくなってしまいます。すると、国民の生命・身体・財産を国家が守れない可能性があります。だから、そんな客観的な状況もあるということです。 ――「急がば回れる国家体制」でありますね。 佐藤 そんな時は、どの国も現行の政権が強くなるんですよ。 ――今がそれですね。 佐藤 そうです。意外ですが、世界にも日本にも家産国家を維持するやり方というのがあります。これは、ファミリー支配です。首相と公務員がではなく、領主様と家来という関係性です。家来はみな「御意、御意」と言って、領主様のいうことを聞いている状態です。 ――その家来の下で、領民が労奴と化している。奴隷ですね。 佐藤 奴隷といっても、領民として、庇護してもらっているところもありますからね。だから結局、城代(じょうだい)の存在が大事になってきます。そして殿様岸田には、秋葉剛男国家安全保障局長という優れた有能な城代家老がいます。 岸田さんが思い詰めて、松の廊下をやられては困るので、城代家老の秋葉が抑えるわけです。私から見ると、ウクライナに殺傷能力のある兵器を送るのは刃傷沙汰が発生した松の廊下みたいなもので、大変なことになります。 ――秋葉城代家老が「殿、殿中にございます。どうかここは」と。 佐藤 そうです。ぐっと堪えて、何を言われても耐えていなきゃいけません。 ――岸田さんはエリートだから、「おのれ、手打ちじゃ!」とすぐに抜刀しちゃいそうですね。