調理中の“つぶやき”が話題の料理系YouTuber・けんた食堂「バズるために奇をてらう気はまったくない」
作務衣姿に丁寧な所作、テンポの良い独特の言い回しとともに完成した料理を、おいしそうに味わう姿――。 ほかにはない新しいスタイルが話題となり、現在YouTubeチャンネル登録者数120万人を誇るけんた食堂さん。動画の総再生数は8億回を超え、世間を賑わせている。 ⇒【写真】“けんた食堂構文”は「まったくの素ですね」と話す けんた食堂として初の著書『うちめし道』の発売が決定した彼に、そのユニークな経歴やインターネットでの発信を始めた理由をたっぷり語ってもらった。
「バズるために奇をてらう気はまったくない」
――けんた食堂さんの動画は、「いつまででも見ていられる」、「見るだけで幸せな気分になれる」とハマる人が続出していますね。そこには、凛とした雰囲気のなか、食へのこだわり、料理へのあくなき探求心が感じられます。 けんた食堂さん(以下、けんたさん):僕、ユーチューバーではあるんですが、バズるために奇をてらったことをしようっていう気はまったくないんです。料理に対して、素材をできるかぎりいじらず、リスペクトすることを一番に考えているので。 せっかく僕の目の前にやってきてくれた素材を、最高においしく調理して食べることが礼儀なんじゃないかなと思ってやっているだけなんです。だからそこに僕なりのアイデアが加わる場合もあるけれど、ベーシックを大切にしていますね。 ――逆にそこが新鮮だったりもします。そして、ものすごく楽しそうに料理されているところも。料理に対するこの姿勢は、どこで培われたのですか? けんたさん:父方の祖母と父の影響が大きかったと思いますね。祖母は、コロッケなんかのハイカラな料理をサクッと作れる人で、食べる楽しさはもちろん作る楽しさも教えてもらいました。 父も祖母に似て料理好きで酒飲みでもあったので、その日飲む酒に合ったつまみを自分でパパっと作っていたのをずっと目にしていたんです。 実家は漁港のすぐそばで、その日獲れた活きのいいものしか手に入らないという恵まれた環境にあったので、魚介に関しては自然に目利き力が身についた気がしますね。 しかも子どもの頃、父親が連れて行ってくれたのは遊園地や水族館みたいなところではなく、「市場」ばっかり(笑)。魚卸のおっちゃんから「ほれ、食え」って、口に放り込まれたカツオを噛みしめながら市場内を歩いていました。いまでもあの光景は忘れられないですね。そんなわけで、食に関してはコアだったんです。