調理中の“つぶやき”が話題の料理系YouTuber・けんた食堂「バズるために奇をてらう気はまったくない」
自分用のメモがYouTube発信のきっかけ
――食に関する英才教育を受けてこられたわけですね。それでご自身も料理の道へと進まれたんですね? けんたさん:実は料理人として働いた経験はないんですよ。仕事は仕事として別のことをしていまして。酒を飲むようになってから親父と同じく、つまみを自分で作るようになって料理に目覚めはしましたが、あくまでも個人的に作っていただけなんです。 ――それは意外でした。現在のように、本格的に料理に取り組むようになったきっかけは? けんたさん:19年前、娘が生まれたのが契機でした。父親として娘になにをしてあげられるだろうと考えたとき、出た答えが「おいしい料理で心と体を満たしてあげたい」だったんですね。 以来、僕が家庭の料理担当になりました。それで毎日のレシピの記録をwebサイト上に掲載するようになったんですよ。紙にメモしただけだと無くしちゃうじゃないですか(笑)。 だから、最初は自分のためだけに、調味料の配合や、うまくいった理由、コツみたいなものをwebサイトに記録していただけでした。 それがなぜか大勢の人に見ていただけるようになって、ブログという形で長らく続き、「けんた食堂」の下地ができたというわけなんです。2018年の終わりに、ブログから動画の世界に本格的に移行して今に至ります。 ――最初は「暮らしの記録」の意味合いが強かったんですね。 けんたさん:そうですね。ただ、いまは記録というよりは、自分の経験から得た「おいしさ」や「料理の楽しさ」を多くの人に伝えたいという想いのほうが強いかな。 日々の料理に真剣に取り組んできたからつかめてきた、「アレとコレの組み合わせは一見斬新だけれど、ほらやっぱりおいしいね!」の感覚をみんなで共有できたらいいなというか。 もちろん僕は今でも料理担当で、家族の食事を3食作っていますし、毎日だしもひいています。
“けんた食堂構文”はどのように生まれたのか
――ところで、「整える」「~~するのが経済」「~~したって構わない」など、動画で流れるけんたさんのナレーションやつぶやきも、“けんた食堂構文”と呼ばれ、人気を博しています。 けんたさん:あれはもう、まったくの「素」ですね。実は僕、自分のこもった声がずっとコンプレックスだったんです。動画を作る際、人工的な声を入れることもできるじゃないですか。 でも、自分の作る料理に正直でありたいし、修正なしのライブ感を大切にするために、盛りつけるところまでしっかり入れ込みたいと決めたわけですから、自分の声も入れてやらなきゃいかんよなって。 それで、料理中のつぶやきをそのまま入れた結果、ありがたいことに人気になっているみたいで、嬉しいですね。 ――つぶやきながら料理されることに驚きました。 けんたさん:あれ、ふつうはしゃべりながら料理しないんですか? 僕、素材相手に「おっ、これはいいぞ」みたいに思ったことをつい口にしてしまうんですが、みなさんも同じだと思っていました(笑)。 そういえば、だいぶ前ですが、子どもの幼稚園のママ友さんがスーパーの奥のほうの売り場から僕がつぶやいている声が聞こえて「あ、けんたさんがいるな」ってわかったとよく言われていたんですよ。食材を手にとっては「これは安いぞ」とか「旨そうだわ」ってよくつぶやいていたらしく…(笑)。