監視委:東証元社員と金融庁職員をインサイダーの疑いで告発
(ブルームバーグ): 証券取引等監視委員会は23日、東京証券取引所の元社員とその実父と、裁判所から金融庁に出向中の職員の3人を金融商品取引法違反(インサイダー取引)の疑いで、東京地方検察庁に告発したと発表した。
発表によると、東証の元社員は2024年1月から3月にかけ、上場部開示業務室勤務の際に知った未公表の株式公開買い付け(TOB)情報を基に利益を得る目的で、ローソン、リソー教育、ジャステックの3銘柄情報を実父に伝達し、実父が同人名義で株式を買い付けていた。
金融庁職員は、企画市場局企業開示課の課長補佐として、公開買付け届出書などの書類審査や処分などを担当していたが、24年4月から8月にかけ、職務権限上知った情報を基に三益半導体工業、日本ハウズイング、ヘリオステクノホールディング、きずなホールディングスなどの複数銘柄を買い付けるなどしていた。
インサイダー取引を巡っては、三井住友信託銀行でも管理職だった元社員により同取引が疑われる事案が判明している。また、野村証券では元社員が強盗殺人未遂事件を起こしたほか、三菱UFJ銀行でも貸金庫の統括責任者だった元行員が中身の顧客資産を盗むなど、金融業界では不祥事が相次いでいる。
加藤勝信金融相は同日夕、記者団に対し、市場を監督する立場の金融庁職員と、東証元職員の告発は「金融行政に対する信頼のみならず、わが国の金融市場の信用を揺るがすものであり、あってはならないことで大変遺憾」とコメント。TOB審査担当者による株取引の禁止など再発防止を徹底する考えを示した。
その上で金融相は、同職員を国家公務員法に基づき免職とするほか、違反行為があった当時の企画市場局企業開示課の課長を減給処分に、前企画市場局長らを戒告処分にしたと明らかにした。東証には事実確認や再発防止に向け、報告徴求命令を発出する予定という。
東証は23日、インサイダー取引の疑いのあるこの人物を同日付で懲戒解雇したと発表した。
(c)2024 Bloomberg L.P.
Takashi Nakamichi