スーツを体に馴染ませ、軽快に着る。
大人への道中、時に迷うことがあっても、慌てず騒がず諦めず。自分を見失うことなく着実に歩を進めるべく、携えてほしい一冊がある。それは、昭和を代表する時代小説家、池波正太郎が残した『男の作法』。身だしなみ、食、女性、家……。1981年、58歳の池波センセイが自身の来し方より導き出した、微に入り細を穿つ“大人の男のあり方”は今もなお、僕らの心に響く。 優等生を目指す必要はないけれど、意識するところから、大人への道は始まる。
『男の作法』より
着慣れない人が和服を着ると相当苦しいだろうと思う。本当は躰は楽なんだよ、和服のほうが。だけど、それには姿勢を正しくしていないといけない。なぜかというと、姿勢を正しくしていないと襟もとがくずれるんだ。そうなると本人も気持ち悪いし、見た目もよくない。
ソリマチさんのように颯爽とスーツを着よう。
街中で、スーツを着て颯爽と歩く男性を見ると、やっぱり大人を感じる。その姿に憧れ、たまに頑張ってスーツを着てみると、池波センセイが語るところの「着慣れない人が和服を着ると相当苦しいだろうと思う」状態になってしまう。そろそろ、スーツが板についた一人前の大人になりたい!
そう、イラストレーターのソリマチアキラさんはいつだって体に馴染んだスーツを軽快に着こなしている。ぜひ、その秘訣を教えてほしい。「10 年くらい同じビスポークで作り、ようやく自分の体の形がわかってきて、やっと体に合うスーツがわかってきました。でも、ただスーツを着るだけではなく、心持ちや所作が美しくないとスーツ姿は格好よくならないと思うんです。そのことは常に心に留めています」。なるほど、着る側の姿勢も大いに問われるということか。「大切なことをもうひとつ。家を出る前に、髪型やネクタイをセットしたら、外では絶対に触ったり、気にしないようにしています。どんなにいいスーツを着ていても、外面ばかり気にするのはみっともないですからね」。今回、スーツの細やかな着こなしの技を教えてもらったけど、この言葉にこそ、大人になるための極意が集約されているのかもしれない。