志尊淳「自己肯定感ゼロの闇の時代を10年間。1ヵ月ほぼ寝たきりの闘病生活で人生観が変わった。朝ドラ『らんまん』でファンの年齢層もひろがり」
◆「命があるだけで十分じゃん」 俳優デビューから12年、役柄の幅を着実に広げ、今や若手実力派の一人として注目を集める志尊さん。特に昨年はNHK連続テレビ小説『らんまん』での好演が話題となった。 ――順風満帆だねと言っていただくんですけど、そう思ったことは一度もありません。最初の10年間は自己肯定感ゼロの闇の時代でした。自分の描いている理想に近づけず、ずっともがき続けていました。 求められているものには精一杯応えたくて、一つ一つの作品にはしっかり向き合ってきたけれど、そのたびに、違うな、ダメだな、まだまだだなって。満足できる瞬間なんてホントに少ない、自分を咎めてばかりの10年でした。 今はようやくそこから抜け出せた感じですかね。「自分が役者としてどうあるべきか」よりも、「この作品をどう作っていくか、この役をどう生きるか」のほうが、実は自分にとって大切なんだと気づけたことが大きいかもしれません。そうしたら、望んでいた姿になれない自分も含めて、これが自分なんだと認めることができるようになりました。 そう思えるようになった直接のきっかけは、3年前に病気で1ヵ月くらい、ほぼ寝たきりの時間を過ごしたことが影響しているかもしれません。そんなに張り詰めて自分にダメ出ししなくてもいいじゃん、命があるだけで十分じゃん、と思えるようになりました。仕事観はともかく、人生観が変わったことは確かですね。 嬉しいのは、『らんまん』をきっかけに、ファンの方の年齢層がものすごく広がったこと。昨年の秋にファンクラブを立ち上げたんですけど、いやもうビックリ。本当にたくさんのご婦人方が入会してくださって。 ソロイベントをやったときは、上は78歳の女性も来場してくださった。「キュンです」とポーズを決めてくれたりね。もうすごく嬉しくて、ありがたくて、これからはみなさんの人生がより豊かになるような活動をしていきたいと思いました。 今年は、新しい何かを始めるというより、日々挑戦の年にしていきたいです。ファンの方への感謝を忘れずに、僕の近くにいる大切な人たちにしっかり愛を注ぎながら、挑み続けていきたいなと思います。 (構成=平林理恵、撮影=小林ばく)
志尊淳