「2015年のW杯前は夫から遺言めいた言葉が」ラグビー田中史朗の妻が支えた17年の現役生活と引退後の夫婦の「次の目標」
■夫の涙は過去のプロセスへの安堵のように見えます ── 一番近くでご主人の苦労を見てきたからこその言葉ですね。 智美さん:命がけで頑張ってきたことを、そばでずっと見続けてきてわかっていただけに「もうやめていいよ」なんて言葉は口にできませんでした。だから、本人にも「私は『やめていいよ』とは言えない。ごめん」といいました。甘い言葉はかけられないからって。きついとは言っていても怪我なく体も動いている。「まだ頑張れるでしょ」「もう少しやろうよ」って。引退する間際ぐらいに、「あのときは優しい言葉をなかなかかけてあげられなくてごめんね」と言いましたけどね(笑)。
── それに対してご主人は何かおっしゃっていましたか? 智美さん:「言ってくれてよかった」と言ってくれています。もしあのとき「もうやめていいよ」と私が言っていたら、その方向に気持ちが傾いていたと思います。あそこで「ちゃんともう頑張りなさい」とお尻を叩いてくれたから頑張れたんだと、感謝の言葉はいただきました。 ── 田中史朗さんといえばテレビ番組などで涙するシーンが印象深いです。 智美さん:泣き虫だからとか、ただ感動して泣いていたというよりも、一つひとつのプロセスに対して、 やってきたことが間違ってなかったな、正解だったなっていう安堵の涙のように私には見えています。ずっと一緒にいて感じていたのは、本当に人一倍、誰よりも日本ラグビーのことを考えている人だということ。日本ラグビーのため、そしてメジャーなスポーツにさせたいという思いで今日まで頑張ってきた人。だから、17年間の現役生活に対しては本当にやりきったねという気持ちでいっぱいです。
■指導者の道を歩み始めた夫と家族の次の目標 ── 2人のお子さんには今後どんな風に育ってほしいと思いますか。 智美さん:10歳の長女と8歳の長男はインターナショナルスクールに通っているんですが、ニュージーランドでの経験があったからこそなんです。去年の12月には私たちが大好きな土地でいろいろ経験してきてもらいたくて、短期間ですが娘をひとりでニュージーランドに行かせたんです。 ── ひとりで行かせることに不安はありませんでしたか?