どうぶつも歯が命/歯学博士照山裕子
「100歳まで食べられる歯と口の話」<38> 現代日本において、歯磨きはほとんどの方がルーティンに行っている慣習です。厚生労働省が定期的に行う歯科疾患実態調査(2022年)によると、1歳以上の国民がどの程度歯を磨いているかという「歯磨き回数(歯ブラシの使用状況)」は97・4%、毎日2回以上磨く人の割合も79・2%です。まさに歯磨きは生活の一部になっていることが如実に見て取れる結果です。 一方で、家族の一員であるペットのお口ケアはどうでしょう。飼い主さんが自分の歯のケアをするのと同じように毎日歯磨きをしてあげていますか。 ヒトの口腔(こうくう)内は中性~弱酸性であるのに対し、犬の口腔内は弱アルカリ性で、歯周病になりやすい環境であるといわれています。 犬や猫など約110万頭が加入しているペット保険「アニコム損害保険株式会社」が実施した調査によると、12%の犬の腸内から歯周病菌が検出され、かつ加齢とともに検出率も上昇することがわかったそうです。そして腸内から歯周病菌が見つかった場合は事故率が高い、すなわち病気になりやすいという結果も出ています。まさに犬にとっても「歯周病は万病のもと」と考えられるのです。 ヒトの歯科医療では、歯周病が全身の健康に与える影響についての研究は加速度的に進んでいます。歯周病の発症に関わる細菌には上下関係がありピラミッド状の構造を成していること、頂点に向かうほど悪性度が高い菌種であることが判明しています。そしてそもそも、口の中が不衛生で細菌の数が多い人ほどこうした極悪な細菌が住み着きやすい環境であることが明らかです。つまり日頃のセルフケアが鍵を握ることはいうまでもありません。また、ヒトからどうぶつへの交差感染もさまざまな研究結果から指摘されています。 ぜひ今日から、ご自身のケアはもちろん、ペットのお口もきれいに保てるような心がけをしてください。