「慰安婦」日韓合意 朴槿恵大統領は韓国世論を抑えられるか
昨年末の慰安婦問題をめぐる「日韓合意」に対して韓国内で批判の声が出ています。今回の合意は政府間の合意で、それ自体は画期的なことと評されていますが、元慰安婦支援の財団に日本側が10億円を拠出する前提として報じられる、大使館前の少女像の撤去に対しても、元慰安婦団体などが反発しています。朴槿恵(パク・クネ)大統領は、こうした韓国世論を抑えることができるのか。「コリアレポート」編集長の辺真一氏に寄稿してもらいました。 【写真】慰安婦問題「日韓合意」は本当に歴史的合意といえるのか
韓国一般国民の反応も真っ二つ
慰安婦問題の日韓合意は日本国内では自民党から共産党まで歓迎の意向を表明しています。世論もまた「評価する」が75%に上り、「評価しない」の14%を大きく上回っていました(日本経済新聞調査) 一方の韓国では与党(セヌリ党)が「賛成」で、野党はこぞって「反対」の立場です。与党は安倍政権から「責任、謝罪、反省」の三つのキーワードを取り付けたことから「一歩前進」と好意的に受け止めていますが、野党は「日本の法的責任が盛り込まれてない」として「屈辱的で売国的で、とても受け入れられない」と合意の破棄を求めています。今春、4年ぶりに総選挙があることから与野党が内政や外交で対立するのは予想されていたことですが、問題は一般国民の反応です。困ったことに世論もまた真っ二つに割れています。 韓国の世論調査会社リアルメーターの調査では「評価しない」が50.7%で「評価する」の43.2%を上回っていました。一方、SBSテレビの調査では逆の結果が出ていました。朴大統領の決断を「正しい」と評価したのが53.3%と「誤りである」(40.4%)を上回っていました。いずれの調査結果が国民感情をより正確に反映しているのかわかりませんが、どちらにせよ国民の賛否もほぼ五分五分というところです。 肝心の当事者である慰安婦(46人)はどうかと言えば、「政府に従う」との声も一部にはありましたが、交渉を担当した外務省の幹部らが説明のため慰安婦らを訪れた際につるし上げられたところを見ると「日韓合意」には総じて不服のようです。 また、毎週水曜日に日本大使館前で集会を開くなど応援団として慰安婦問題の解決を求めてきた韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)は「被害者と国民感情を背信した外交的野合である」と日韓合意を非難していました。