「慰安婦」日韓合意 朴槿恵大統領は韓国世論を抑えられるか
大使館前の少女像撤去も不透明なまま
何よりも、日本大使館前に設置されている少女像の撤去、移転が日本政府の思い通りに実現するかどうかも不透明のままです。 朴政権は「関連団体との協議を通じて、適切に解決されるよう努力する」と安倍政権に約束しましたが、銅像を設置した「挺対協」の同意を得るのは容易ではありません。韓国教会女性連合会や韓国女性団体連合会等16の団体から成る「挺対協」が今回の合意に猛反発しているだけでなく、移転には66.3%の国民が反対(リアルメーターの調査)しているからです。 忘れてはならないのは、慰安婦問題はあくまで日韓懸案の一つに過ぎず、この問題が解決されたからといって日韓の火種となっている歴史認識の問題が解決されたわけではありません。日韓間には「竹島」(韓国名:独島)の領土問題、日本海(韓国名:東海)の呼称問題、教科書問題、靖国参拝問題、文化財の返還や世界遺産登録問題などナショナリズムを刺激しかねない難題が残っています。一つでも火が付けば、他の問題に飛び火します。それが、きっかけでレイムダックを防ぐため朴大統領が寝返る可能性もないとは言い切れません。
■辺真一(ぴょん・じんいる) 「コリアレポート」編集長。東京生まれ。明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者を経て、フリージャーナリストへ。 1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。 1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。 1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。 1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。 2003年 海上保安庁政策アドバイザー。 2003年 沖縄大学客員教授