「慰安婦」日韓合意 朴槿恵大統領は韓国世論を抑えられるか
政治・経済・外交的事情を優先?
口を開く度に日本政府に「慰安婦の方々が納得でき、国民が受け入れられるような対応」を求めていた朴槿恵大統領としては国民から拍手喝采を浴びるにはほど遠い結果を招いたことになりますが、それもこれも政治的、経済的、外交的事情を優先されたからに他なりません。即ち、政治的には歴代政権が解決できなかった慰安婦問題を日韓国交50周年の記念すべき年に片づけることで成果を上げ、経済的には落ち込んだ日本人観光客の誘致や投資を呼び戻し、景気を回復させ、併せて北東アジアの安全保障上の観点から日本との関係修復を求める米国の要望にも応えるとの外交的思惑も働いたようです。 「慰安婦問題が解決しない状態では、首脳会談はしない方がましだ。首脳会談をしても得るものがない」との立場を一転させて昨年11月2日に安倍総理をソウルに招請し、日韓首脳会談に応じたのも、「自分に対する冒とくは国民への侮辱である」と強弁し、「民事・刑事上の責任を必ず問う」と産経新聞前ソウル支局長を名誉棄損で起訴した裁判で敗訴したにも関わらず、控訴もせず、逆にあたかも無罪にするよう裁判所に配慮を求めた外務省の書簡を容認したのも「国益」を優先させたからに他なりません。
合意批判の野党が政権奪取の可能性も
今後これで最終解決に向かうかは、予断は許しません。何よりも、日韓両政府が今回の合意で慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認した」としても単なる口頭での約束で、文書化もされておらず、国際法上の拘束力もありません。 仮に文書化されたとしても、有名無実化してしまった1994年の「米朝ジュネーブ核合意」や形骸化されつつある一昨年の「日朝ストックホルム合意」を例に取るまでもなく、約束が果たされるとの保証はありません。現に韓国では政権が交代する度に蒸し返され、日本もまた安倍政権下で村山談話や河野談話の見直しの声が起きたのは紛れもない事実です。日本の場合、現状では政権交代ははるか先の話かもしれませんが、韓国は、来年の大統領選挙次第では、野党が政権を担うかもしれません。その野党は日韓合意の破棄、再交渉を求めています。