ブラジル史上最大規模の水害…闘将ドゥンガは連日の救済活動に従事
自ら陣頭指揮を執り物資を運ぶ
支援の形は物だけでない。例えば、ポルト・アレグレの空港も冠水し、5月6日から閉鎖されているため、航空会社がこの活動のために協力を申し出て、近郊の空軍基地と手を組み、寄付された物資の輸送を実現している。 同州では昨年9月にも集中豪雨によって5万人以上が被害を受け、4000人以上が避難を余儀なくされる水害が起こった。ドゥンガはその際に住居を失った人たちのために、家の建設と提供も行ってきた。今回もそのノウハウを生かし、100軒を建設するためのキャンペーンを立ち上げた。 彼はこうした活動の陣頭指揮を執るとともに、自分も寄付を行っている。同時に、物資を運ぶための担ぎ手の1人でもある。 また、こうした活動を支えるスタッフやボランティアにも心を砕いているのが、ドゥンガの人柄と経験ならではだ。物資の運搬は重労働で、力仕事。彼はその作業に一緒に取り組んだ後、インスタに投稿するために「〇〇に物資を搬入しました。早朝から筋トレに励んだのは彼らです!」などと紹介し、ボランティアたちを笑わせる。炊き出しの現場では、その弁当を立ったまま食べながら「最高! すごくおいしいから、僕も食べさせてもらうよ!」と周囲を和ませる。体力も気力も消耗しやすい現場だからこそ、笑顔をもたらそうとしているのだ。 5月12日の母の日には、普通なら家族で過ごすはずの日にボランティア活動をするお母さんたちに、小さな花束やチョコレートをプレゼントし、熱いスピーチで感涙させた。 また、物資を届けた先では可能な限り被災者たちを抱きしめ、肩を抱いて、言葉をかける。炊き出しの弁当箱の蓋に、黙々とメッセージとサインを書いていることもある。
すべてを注いで救済に取り組む
自分の持つ知名度や経済的なコンディションに加え、これまでの経験や人脈を最大限に生かし、仲間たちと様々な方法で被災者に手を差し伸べる。その際には、寄付する側、受け取る側、スタッフやボランティアなど、全方位に細やかに配慮し、連帯感を生み出している。 ドゥンガ自身は今もサッカーに情熱を抱いている。監督業も、自分から探すことはないが、日頃から「今後のことは分からない」とし、「興味のあるオファーが来れば考える準備はある」と言っている。今年2月には元チームメイトであり、現スポーツダイレクターの藤田俊哉氏による発案でジュビロ磐田訪問が実現し、クラブのために精力的に活動した。 そんな中、今回の歴史的規模の水害では、知恵、体力、経験、忍耐、愛情のすべてを注いで救済に取り組んでいる。その活動は、同州復興の長い道のりとともに、この後も続いていくはずだ。