序盤の苦戦を跳ね除けて12年ぶり九州新人戦を制覇 新たな選手や新ポジションで躍動した選手の台頭が最大の収穫に
予選リーグの2日間は有村圭一郎監督とエースのFW名和田我空(2年)が高校選抜の活動で不在。さらに初日の試合で新キャプテン・CB鈴木悠仁(2年)と司令塔・福島和毅(1年)が負傷した。飛車と角が不在の戦いを余儀なくされたが、逆境を跳ね返して九州王者の座を勝ち取った。 【フォトギャラリー】 神村学園 vs 大津 2月17日から20日まで鹿児島県で行われた九州高等学校(U-17)サッカー大会は神村学園の12年ぶり3度目の優勝で幕を閉じた。 今大会の神村学園は地元開催だったが、序盤戦から苦しんだ。前述の通り、怪我人が続出。ベストメンバーを揃えられず、FW日高元を今大会はSBやサイドハーフで試すプランを温めていたが、早々に断念して元の最前線にポジションを戻すことを余儀なくされた。17日に行われた予選リーグの国見戦はボランチで新垣陽盛(2年)を中心になんとかゲームをコントロールしようとしたが、ほとんどボールを繋げず、相手のカウンターに苦戦。1-0で敗れ、攻守両面で多くの課題を残す結果となった。 2位で決勝トーナメントに進んだが、不安は尽きない。しかし、19日から合流した有村監督の下でチームは一気に巻き返す。コンディションが心配された名和田も準々決勝の鵬翔戦から先発に戻ると、0-1で迎えた後半17分に名和田がワンチャンスを仕留める。右サイドからのクロスを鮮やかにニアサイドで受けると、右足でネットを揺らした。勢い付いたチームは29分に逆転に成功。土壇場で同点に追い付かれたが、何とかPK戦を制して準決勝進出を決めた。 続く佐賀東戦は鈴木と福島に加え、前の試合で負傷した新垣もベンチスタート。満身創痍の中でチームは前半を0-0で折り返すと、後半11分に名和田が先制点をゲット。大雨の影響で泥濘んだピッチをもろともせずに右足でネットを揺らした。チームも攻撃の手を緩めず、さらに2点を追加。磐石の試合運びで20日の決勝に駒を進めた。 そして、迎えた決勝では大津と対戦。フィジカル面で優位に立つ大津に対し、序盤から苦戦を強いられる。ボールを保持できず、エースの名和田にも良い形でボールが入らない。それでも、黒木涼我(2年)と中野陽斗(1年)のCBコンビを軸に守備陣が粘り強く対応し、味方の反撃を待った。すると、前半29分に名和田が魅せる。一瞬の隙をついてニアサイドで受けると、間接視野でゴール前を把握して折り返す。鮮やかなラストパスに大成健人が合わせてこれが決勝点となった。 後半もタフに戦い続けたチームは無失点で12年ぶりに九州新人戦を制覇。「ボランチのところでボールを受けるのを怖がっていたので、ちょっと難しくなった。でも、後ろが今大会は少しずつ良くなってきて、失点しないような状況を頑張って作ってくれたのでそこは収穫だったと思います」とは有村監督の言葉。序盤戦は攻守で“神村学園らしさ”を出せなかったが、尻上がりに調子を上げて一気に頂点まで登り詰めた。 今大会は怪我人が多く、ベストメンバーは組めなかったが、新たな選手の台頭もあった。予選リーグの2節目からCBでコンビを組んだ中野と黒木も試合を追うごとに安定感をアップ。大津戦では球際の攻防で怯むことはなかった。初戦で怪我をし、決勝トーナメントから戻ってきた鈴木をCBで使う必要性がなった影響からボランチで起用。この策も見事にハマり、新たな可能性を感じさせた。 幸先のいいスタートを切った神村学園。ここから再びフェスティバルや練習試合などで技を磨き、4月に開幕するU-18高円宮杯プレミアリーグWESTに備える。負傷した主力組の状態が戻れば、選手起用の幅も広がってくるはず。まだ最適解は見出せていないが、今大会で示した新たな可能性は今季を戦う上で武器になるはずだ。 (文・写真=松尾祐希)