<掛布が語る>阪神の江夏臨時コーチに意義はあったか?
阪神OBの江夏豊さんが、2月1日から2月8日まで臨時コーチとして沖縄・宜野座キャンプに参加された。 私も江夏さんのサポートができればと同時期に沖縄キャンプに滞在した。練習中は、私は野手を見るので江夏さんのコーチぶりを拝見はできていないのだが、毎日、夕食を共にさせていただいたので、その席で、いろんな話を教えていただき、コーチやスタッフからも江夏さんが来たことで、どういう刺激や効果がチームに生まれたかを耳にした。連日、ブルペンにはピリっとした緊張感があったという。今の選手にはない、江夏さんが持つ独特の存在感が空気を変えたのだ。 江夏さんが、まず説いたのはキャッチボールの重要性だ。質のいいストレートボールをキャッチボールで投げるためには、小手先でごまかすことはできない。下半身から上半身へと、しっかりと連動させることが大切で、そういうピッチングの原点を江夏さんは、情報過多でついつい頭でっかちになりがちな現代っ子たちに気づかせたのだ。キャンプが何日か経過した時点だったと思うが、江夏さんは、ブルペンでの「球数が絶対的に少なく感じる」という話をされていた。 「確かに時代は変わっていて、俺たちの時代がすべて良かったなんでことは言わない。だが、俺たちは、月間2000から3000球は、キャンプトータルで投げ込んでいた。投げ込むことで付くスタミナや固まっていくフォームバランスがあるんだ」と力説された。 また第1クールでは「もっとストレートを投げ込むべきだ」とも言われていた。ピッチングを見ていると、少ない球数なのに、すぐに変化球を混ぜていて、江夏さんは「ストレートを投げることが一番しんどい。変化球でごまかすな!」と腹が立ったという。 この指摘も重要だった。 「掛よ。それにしても、やらされている感が強いように見えた。自分でやろうと変わっていかなくちゃ、そこに成長はないんだ」 いわゆる主体性の話である。