ソフトバンク、AIと無線通信網が融合する次世代システムを公開 自動運転やロボット操作
ソフトバンクは5日、人工知能(AI)と無線通信ネットワークを同一のコンピューター基盤に実装して融合させた次世代の通信システム「AITRAS(アイトラス)」の実証実験を公開した。AIが複数の基地局を協調させ、通信品質が向上するほか、計算資源を需要に合わせて柔軟に配分できるのが特長で、通信量が少ない時間帯に別の用途として活用することもできる。顧客の端末に近い場所で高度な処理ができるため、自動運転やロボットの遠隔操作などでも通信の遅延を短縮することができる。 アイトラスは米半導体大手のエヌビディアなどと連携して構築したシステムで、需要に合わせてコンピューターの役割を変えることで、無線通信システムの運用で余った計算能力をAIの動作に充てることができる。 慶応義塾大の湘南藤沢キャンパス(神奈川県藤沢市)に第5世代(5G)移動通信システムの通信網を構築し、実証実験を実施している。実験では100メートルの範囲に20本のアンテナを密接に立て、最適な通信ができるように制御するAI技術を検証。こうした技術は、基地局が密集する都市部での通信品質の向上につながるほか、自動運転やロボットの遠隔操作といった通信の遅延が許されない用途を社会で実現するために欠かせないという。 同キャンパスではアイトラスを使って、横断歩道付近に路上駐車している車があった場合に、AIで危険を察知できるかや、不審者を見つけた犬型ロボットがカメラ映像を解析して後ろを追いかけることができるか、などの実験も併せて実施している。 自動運転やロボットが実社会で活躍するには、不測の事態に対処する必要がある。例えば、自動運転では、横断歩道付近での一時停止のルールなど、日本の交通規則に沿った運転が必要になる。AIの進化で、コンピューターが知識から答えを導き出すことが可能になった一方、答えを出すためには膨大な計算が必要で、遅延時間の短縮が次世代の通信網の課題となっている。(高木克聡)