猫が人間に変身して料理する!? 『シマシマ』『アンダーズ』の作者が “猫も料理も避けたかった”理由
猫のミケが人間に変身し、飼い主のために料理を作る。料理漫画『にゃーの恩返し』(文藝春秋)では、猫の飼い主・アヤとシュウの恋模様を中心に、ミケが作ったおいしそうな料理がいくつも登場します。 【画像】調理風景を資料用に撮影する山崎さん 作者の山崎紗也夏さんに、連載作品として初めて料理漫画に挑戦した理由や料理のレシピなどについてお話を伺いました。
苦手な「猫」と「料理」漫画にあえて挑戦した理由
――『にゃーの恩返し』を考えたきっかけを教えてください。 山崎 もともと「猫」と「料理」の題材は避けたいと思っていたんですけど、編集部との打ち合わせで候補にのぼったんです。それでいろいろ考えて、「描きやすい漫画ばかりを描いていても成長しないし、チャレンジしてみよう」と決めました。 ――これまではなぜ避けてきたんですか? 山崎 私より猫をうまく描ける人はたくさんいますから、自信がなかったんです。編集部は私が保護猫を飼い始めたから「猫」という題材を上げてきたわけですけど、被写体がそばにいるからといって、うまく描けるわけではないですから。 料理に関しては、前に読み切り漫画で題材にしたことがあったんです。それで恋愛漫画を描くより工程が必要なことがわかりました。例えば、漫画に登場する調理風景は、作画用にすべて撮影してから描くんです。包丁を握る手はどこから撮影するのが絵として映えるのかを考える。そういう資料作りで半日くらいかかります。それから、どの写真が漫画で合うかネームを描きながら決めていくんです。 ――漫画にする前の工程で、かなり時間がかかるんですね。 山崎 そうなんです。調理風景の資料撮影は、人に頼むと自分が「こう撮りたい」と思った絵にはなかなかならないから難しいんです。料理を作りながら三脚を使って撮影。また手を洗って調理して撮影を繰り返しています。
「次作はもっとこうしたい!」が原動力に
――連載が始まって1年ほど経ちましたが、「猫」と「料理」への苦手意識は払しょくされましたか? 山崎 まだまだですね。「恋愛漫画だったらもっと早く描けるのに」と思う瞬間があります。 でも、これまでにも苦手な題材にチャレンジした作品はあったんですよ。『シマシマ』(講談社)では、もともとイケメンが描けなかったけど、なんとかイケてる男の子たちを描くことに挑戦しましたし、『サイレーン』(同)では警察ものに興味がなかったけど一から勉強していきました。 どの作品も私の中では「完璧」と思うレベルに到達したことはなくて、「次の作品ではもっとうまく描こう」と思うんです。ある意味、その思いが原動力となって次の作品につながっているのかもしれませんね。