入籍していなくても「扶養手当」は出るのに、なぜ同性パートナーはダメ? 判決に専門家の批判が次々、他県ではOKのケースも
札幌市に住む佐々木カヲルさん(54)には、同性のパートナーがいる。一緒に暮らし、札幌市の「パートナーシップ宣誓」の受領証も持っている。普段の生活では多くの男女間の夫婦と変わるところがない。例えば国民健康保険証には世帯主として佐々木さんの名前が書かれ、クレジットカードの家族カードも作れた。携帯電話料金は家族割が適用されている。一方が病気を患った時、医師による治療方針の説明にもう一方が家族として同席することも申し合わせている。 「岸田首相、なぜ日本では同性婚できないの?」LGBTQの子供らが手紙 SNSで広がる切実な思い
ところが、勤務先の北海道庁に扶養手当などを申請したところ、断られた。手当は、男女であれば入籍していない「事実婚」状態でも認められるのに、なぜ同性同士では認められないのか。手だてを尽くして再考を求めたが、道庁が「検討すらしていなかった」ことが判明。20年以上勤めた職場だったが、失望して退職した。訴えを受けた裁判所は、どう判断したのか。(共同通信=日下宗大) ▽“普通”じゃない 佐々木さんは小学4~5年のころからスカートをはかなくなった。女性っぽい服装に違和感を覚えたからだった。小学5年の頃には同級生の女の子に好意を抱き、中学生になるとはっきりした恋愛感情を持った。家に遊びに行く仲だったが、思いを伝える勇気はなかった。「やはり“普通”じゃないと思ったから」 大学時代には男性と交際してみたが、女性と一緒にいる時間と比べ、気持ちは高まらない。初めて女性と付き合ったのは27歳の頃。戸籍上は女性だが、性自認は男女の区分がしっくりこない「ノンバイナリー」だ。
ただ、両親にはなかなか言い出せなかった。カミングアウトすることで、親子の縁を切られるかもしれない。それでも、年齢を重ねるにつれて、大切なことを隠したままではいられない気持ちが強くなった。手紙を書いて伝えたのは約7年前。47歳になっていた。親からは翌日、「今までと変わらないから、また遊びにおいで」と電話があった。「もっと早く言っておけば良かった」 ▽夫婦同然 現在のパートナーと2018年に知り合うと、すぐに意気投合した。5月5日の夜に初めて顔を合わせ、26日には札幌市内の百貨店で結婚指輪を買ったほどだ。 6月6日、互いの家族や友人が見守る中、札幌市パートナーシップ宣誓の手続きをした。性的マイノリティーの人たちは現行法上、結婚することができない。代わりに、人生のパートナーとして協力し合うことを約束した関係だと、札幌市長に誓約する制度だ。受領証を受け取り、感動して泣いた。 7月16日、共同生活をする上での決まり事を定めた契約書を交わした。住民票上も一緒の世帯として登録され、携帯電話やクレジットカードなど多くの民間企業も2人を家族として扱っている。結婚の意思を持って一緒に生活し、周囲も受け入れる。「社会の一員として認められ、とても心地よかった」