入籍していなくても「扶養手当」は出るのに、なぜ同性パートナーはダメ? 判決に専門家の批判が次々、他県ではOKのケースも
▽扶養手当認められず 勤務先である北海道庁にはパートナーを配偶者として届け出て、7月19日に寒冷地手当の増額を、23日に扶養親族がいる場合に支払われる扶養手当を申請した。「ちゃんと説明すれば分かってくれるはず」と職場を信頼していた。20日には、地方職員共済組合にパートナーの保険証交付を求め、被扶養者として認定するよう申し込んだ。 ところが、申請はいずれも認められなかった。道庁人事局の担当者らは11月、会議室に佐々木さんを呼び、次の通り理由を説明した。 (1)国やほかの都府県で、自治体の同性パートナーシップ制度の利用を理由に手当を認定した事例が確認できない (2)札幌市の制度は結婚制度とは性質が異なる (3)手当の支給は公金の支出であり、職員間の公平性の確保と納税者の理解が必要 佐々木さんは諦めない。難航した場合に備えて手作りしていた「要望書」を担当者に手渡したのだ。家族らが署名した内縁関係の証明書のほか、道外の性的マイノリティーに関する施策などの資料を独自にまとめたもので、厚さ2センチのボリューム。大変な作業だったが「私は私であることを認めてほしい」との思いが支えとなっていた。
しかし、要望書を受け取った担当者の反応は薄い。待っても返答が来ない日々が続いた。気になった佐々木さん側は、検討状況について情報開示請求をしたが、2019年4月上旬に届いた通知は「不存在」。官公庁は意思決定過程を書類で記録に残すのが基本中の基本だ。それが存在しないということは「えっ、何も検討していないの」。ぼうぜんとした。 諦めきれず、4月18日に再度、道庁に扶養手当などの申請をした。共同名義で購入したマンションに2人で転居することなど、新たな理由を追加したが、再び退けられた。「職場から完全に無視された」。仕事への意欲も失い、6月に退職した。 ▽提訴 社会福祉士として再スタートを切っても、胸のつかえは取れなかった。道庁は、異性カップルならば事実婚でも扶養手当を支給している。北海道がまとめた「人権施策推進基本方針」では「性的マイノリティーの人権」が明言されている。道庁の態度は、この方針と矛盾しているのではないか。2021年、精神的苦痛に対する損害賠償と、未払いとなっていた手当の支払いを求め、提訴に踏み切った。