“和牛日本一”連覇も厳しい現状 餌代高騰に国内需要の冷え込み 海外から高評価も生産効率の課題に直面する現実も
輸出実績額は10年前の4倍、約140億円に
大隅半島・曽於市の食肉メーカー・ナンチクの倉庫に積まれているのは、様々な行き先が書かれた段ボール。 ブロックに加工された和牛を、現在、アメリカや台湾、EUなど13カ国に輸出している。 ナンチク輸出促進部の坂元秀明部長は「(和牛は)口の中に入れると溶けてしまう。『ものすごくジューシー』『おいしい』と、どこの国に行ってもその評価」と、鹿児島和牛に対する海外からの高い評価について語る。 2023年、鹿児島から輸出された牛肉の実績額は10年前の4倍の約140億円。ナンチクの輸出実績も右肩上がりが続いている。 2024年にナンチクに入社した最上川ひまりさんは、4万人以上が来場する台湾の食品展示会にスタッフとして派遣され、鹿児島和牛の評判に直に触れた。「『おいしい』と、日本語で言ってくれる人がたくさんいて、期待されているんだなと感じた」と、海外で実感した鹿児島和牛への高い評価について語った。 好調が続く輸出だが、一方で「海外からのオーダーが年々煩雑さを増して、細かいオーダーが来ているのが現状。そうなると生産効率が落ちるので、そこをいかにクリアしていくか」と、坂元部長は新たな課題をあげた。
新たな打開策「おいしい脂」
販路拡大に加えて進むのが、和牛の味を高める研究だ。薩摩川内市で10頭の種牛を管理する萩原人工授精所・萩原廣宣社長が、期待の1頭「茂忠陽」を紹介してくれた。 萩原廣宣社長: これが茂忠陽です。MUFAですね。これが県の最高ランク、Aランクという評価を受けた種雄牛です。 萩原さんの説明の中で出てきたMUFAという聞き慣れない言葉。和牛のサシに含まれる脂肪酸の一種で、加熱したときの香りや、口溶け、舌触りの良さにつながるといわれている。 県の畜産試験場でもこのMUFAを増やすための餌の開発や、理想的な割合の検証などが進められている。まさに日本一の鹿児島和牛をさらに磨き上げるための研究だ。萩原さんの種牛は子牛に最適な割合のMUFAを遺伝できる可能性が評価された。 MUFAについて萩原社長は「MUFAの高い脂は、オリーブオイルやひまわり油など体に良い脂と言われる。脂だけれどもいくらでも食べられる。甘みもあって味もしっかりある。胃もたれしない。それがMUFAの値が高い脂。見た目も優れている、味もおいしい、体にも良い、そういう和牛肉を生産する必要がある」と、MUFAと和牛の未来について語る。 子牛価格の下落、飼料価格の高騰、頭打ちの国内需要。和牛日本一という輝かしい実績の一方で、不安要素も数多くある鹿児島和牛を巡る現状。 どのようにして和牛とともに生き残っていくか。関係者の模索は続く。 (鹿児島テレビ)
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