突然姿を消した派閥事務局長、それが全ての始まりだった 二階元幹事長の不出馬表明の真相【裏金政治の舞台裏⑤】
派閥の解散だけでは済まなかった。二階は1月、自身の資金管理団体「新政経研究会」の政治資金収支報告書を訂正し、支出先として計上した約3470万円分を書籍代に充てたと説明した。しかし、世論の反発は依然強く、自身の秘書が略式起訴されたこともあり、二階の党内処分は避けられない状況だった。 一方、党内には幹事長を歴代最長の5年余りも務めた二階への処分に慎重論もあった。ある党幹部は「党勢を拡大させた功労者を処分するわけにはいかない」と断言した。 党総務会長の森山裕もその一人だった。「重い処分を受けるぐらいなら、その前にけじめをつける」との二階の意向を耳にした森山は、軟着陸に向けて首相、岸田文雄に働きかけた。森山は3月7、15両日に岸田と一対一で面会。処分内容を考えあぐねる岸田に「組織的な裏金づくりをしていた安倍派幹部と同じ処分ではいけない」と進言し、区別するよう求めた。 二階に近い関係者が処分を回避すべく考えた方策が、次期衆院選への不出馬表明だった。関係者によると、党紀委員会による処分で党員資格停止に次いで4番目に重い「選挙での非公認」と同じ意味を持ち、重い処分を下さない理屈も立つ。周辺は「最大の責任の取り方だ」と処分回避に自信を見せた。 ▽派閥回帰へ意気軒昂
不出馬表明の舞台には、二階が幹事長時代に使っていた党本部4階の記者会見室が選ばれた。それも「二階さんが使い続けた場所だから」との周辺の配慮だった。 そして、党が処分を決定する4月4日の直前の3月25日、二階は党本部で記者会見を開き、裏金事件に関し「政治責任は全て私自身にある」と自らの衆院選不出馬を明言した。85歳の二階にとって、衆院選不出馬は事実上の衆院議員引退を指す。 結果、二階は処分を免れた。それから約5カ月、入退院を繰り返しながらも、二階本人は意気軒高だ。党本部の自室も維持されている。そして二階派は党総裁選に向けて当選回数別の会合を開き「派閥回帰」の動きを見せている。周辺の一人は語る。「二階さんはまだまだ元気だ。次に何をやろうかと今も考えている」