《浸透する終末期医療》“中途半端な情報”に惑わされ、より苦しい最期になるケースも 医師は「終末期こそ、患者と家族は“わがまま”になるべき」と助言
終末期こそ、患者とその家族はうんと“わがまま”になるべき
終末期医療において最善の方法を選ぶことが難しいのは、薬の扱い方についても同様だと話すのは南日本ヘルスリサーチラボ代表で医師の森田洋之さんだ。 「薬ののみすぎが害になる多剤併用の問題が一般化した結果、『できるだけのみたくない』という患者が増える一方、『薬がなければ不安で、手放したくない』と話す人もいる。終末期医療において、しばしばそうした両面的な事態が生じるのは、医療に“完璧な正解”がないからです。 高齢者は体力も持病も個々人で状態が大きく異なるため、薬ひとつとってもまったく違う効き方をする。治療がどちらに転ぶかわかりません。医師として正直に言えば、やってみないとわからない部分がある。最終的には患者本人の希望が優先されるべきです。 だから終末期こそ、医師に主導権を渡さず患者本人の希望が優先されるよう、患者とその家族はうんと“わがまま”になるべきです。終末期医療の場合、一度医師や病院を決めたら“最期まで寄り添ってもらわなければならない”と思い込んでいる人も多いですが、方針に納得できなかったり相性が悪かったら変えることを検討してもいい」
自身の最期に妥協しない“わがまま”な患者になるためには本人がしっかり考え、家族とも話し合っておく必要がある。 「なるべく早めに話しておくことをおすすめします。看取りの現場で散見されるのは本人が息を引き取る間際になって多くの人が駆け付けるものの、終末期はかなり体が弱って、人と会うのがしんどいんです。 だから元気で意識がしっかりしているうちからできるだけ顔を合わせて、いろいろなことを話してほしい」(後閑さん) 自分のため、残された大切な人のため──よかれと思って進めてきた「最期の準備」で立つ鳥跡を濁すことがないよう、ゆっくり、しかし着実な方法で「その日」に向けて歩き出そう。 ※女性セブン2024年10月24・31日号