マイケルジャクソンのDVDを”意外なところで”販売し大ヒット…天才経営者の驚異的な「マーケティング戦術」
予想の7倍売り上げた魔法のアイデア
下手の考え休むに似たり こういう言葉がありますが、「休む」どころか「後退」、下手な考えは「アイデアを、事業を殺し」ます。 石橋を叩いて渡るという言葉もあります。事前に「勉強」をして、結果、この言葉のように橋を渡ればいいのですが、結局、渡らない。中には「石橋を叩いて壊す」などと冗談めかして言われることもあります。逆に「知らないからこそ」チャレンジできることもあります。 もう一つ、知人のエピソードを紹介します。プロ経営者として、DELL、Lenovoで要職を歴任、ハイアールアジアの再建に尽力した伊藤嘉明氏です。彼がソニー・ピクチャーズ エンタテインメント時代、あのキング・オブ・ポップ、マイケル・ジャクソンの遺作となった『THIS IS IT』のDVDが発売されることになりました。 日本支社のベテランたちの判断は「30万枚、よくて35万枚」という販売予測。しかし、伊藤氏は「100万枚はいける」と直感的に感じたそうです。ちなみに日本での映像ソフト売上ではスタジオ・ジブリの『千と千尋の神隠し』は累計600万。これが当時の日本歴代トップの販売数でした。 日本支社の幹部が出した予想数値は、綿密に「どの販売店で〇枚」と積み上げられたもので、説得力がある数字だったそうです。しかし、世界ナンバーワンのマイケル・ジャクソンのラストDVDがたった30万枚なのか? という気持ちが消えず、「ならば売る場所を増やせばいい」と考えます。 当時はいまほどネット通販が強くはなく、DVDのほとんどはリアルな店舗、つまりCD、DVDショップで売れていました。そこで伊藤氏は、スポーツジム、ダンススタジオなどで売ることを思いつき、実行します。 マイケル・ジャクソンの楽曲はミュージックビデオ人気も高く、またそのダンスも大きな魅力でした。そのファンはスポーツジムでエアロビクスを習っていたり、ダンススタジオに通っていたりするだろうという推測です。古参の社員には、思いつきもしない策でした。音楽のDVDは、CDショップで売るものなのですから。