『ソウX』ケヴィン・グルタート監督 ジグソウがいなければ成立し得ない『ソウ』ワールド【Director’s Interview Vol.445】
不条理かつミステリアスな展開とデスゲームの衝撃的な描写で、低予算ながらセンセーションを巻き起こしたスリラー『ソウ』(04)。天才殺人鬼ジグソウこと、ジョン・クレイマーが仕掛ける趣向を凝らした“ゲーム”はこの後のシリーズでも描かれ、好評を博した。そんなシリーズの第10作『ソウX』が、いよいよ日本公開される。 ここで描かれるのは、1作目と2作目の間に位置するジグソウ存命時の知られざるエピソード。これまでのシリーズはゲームを仕掛けられた側の人間の視点で物語が展開したが、今回は仕掛ける側、すなわちジグソウの目線で衝撃のドラマが描かれる。シリーズ中、もっともユニークでもっともエモーショナルなストーリーはどのようにして生まれたのか? シリーズのほとんどの作品に編集スタッフとして関わり、6、7作目に続いて監督を務めたケヴィン・グルタートに話を聞いた。
『ソウX』あらすじ
末期がんで余命宣告を受けたジョン・クレイマー(トビン・ベル)は、危険な実験的治療を試すためにメキシコへと向かう。しかし実際に現地に行ってみると、治療の話は詐欺だった。自分がだまされたことを知った彼は、自らをだました詐欺師や不正な治療に加担する医師たちに死のゲームを仕掛ける。
ジグソウがいなければ成立し得ない『ソウ』ワールド
Q:ジグソウことジョン・クレイマーは3作目で世を去り、以降は没後も影響をあたえる象徴的な存在として描かれてきました。今、改めて彼の生きている時期の物語を映画化したのはなぜでしょう? グルタート:この脚本自体は2017年に出来上がっていた。つまり、前作『スパイラル:ソウ オールリセット』(21)が作られる前の時点ですね。シリーズを振り返ると、『ソウ』の世界の中心にいるのは、やはりジグソウです。『スパイラル:ソウ オールリセット』には彼は登場しないが、これを作った後にやはりジグソウは必要だと強く感じました。そこで以前の脚本を読み直したら、これはイケると思えたのです。 Q:ジグソウが最初から最後まで、主人公として登場するのはシリーズで初めてです。その哲学や人間性が明快に伝わってくるという点で新鮮でしたが、これは意図的なものですか? グルタート:そうですね。ジョン・クレイマーというキャラクターは、これまで映画に描かれることのなかった珍しいキャラクターです。頭脳明晰であると同時に、心にはどこか壊れている部分がある。初期の『ソウ』では、この壊れている側面が大きく描かれていました。そんな彼が窮地に立たされ、また追い込まれることを見せることで、観客が彼に同情するような作りにしたらどうだろう?と考えました。もちろん彼はシリアルキラーであって同情されるような立場にはありませんが、だからこそ面白いと思ったんです。そもそもジョンには内面の核の部分に力強いものがあります。観客は彼を見て恐怖と共感を覚えながら、その核にある謎を解こうとしているのではないでしょぅか。
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