中国製EV、米欧は関税措置も日本は慎重 過剰生産には公正な市場ルールで対応
中国製電気自動車(EV)を巡っては、過剰生産で不当に安い製品が出回っているとして、米欧が輸入関税を引き上げる方針だ。中国はこれに反発し、対抗措置をちらつかせる。一方で主要な貿易相手国である中国を刺激したくない日本は、公正な市場ルール作りを進め、EVなどの戦略物資で特定国に依存しない方策を模索する。 ■米欧の関税措置に中国は猛反発 中国製EVは政府の巨額の補助金を背景に過剰生産され、海外に安値で流出していると指摘される。日本総合研究所によると、今年5月の輸出台数は前年同月より約2万台多い15万9862台。輸出単価は約5千ドル安い1万8842ドルだった。 過剰生産を問題視するバイデン米政権は5月、不公正な取引慣行への制裁措置を定めた「通商法301条」に基づき、中国製EVの関税を現行の4倍の100%に引き上げると発表した。欧州連合(EU)の執行機関の欧州委員会も6月、欧州企業を脅かしかねないとして、中国製EVに最大38・1%の追加関税を課す方針を明らかにした。 中国は強く反発し、商務省が米国に対し「断固反対する」との報道官談話を出して対抗措置を示唆。EUとは追加関税に関する協議に入ったが、輸入豚肉への関税引き上げをちらつかせるなど徹底抗戦の構えをみせる。 ■中国過剰生産の影響広がる 中国には焦りが見え隠れする。足元ではEVの世界需要が失速し、関税が追い打ちをかける恐れがある。EVの車載電池などに使われるリチウムイオン電池は中国国内で過当競争となり、政府は6月に生産能力拡大を抑える方針を打ち出した。 一方で、まだ中国製EVが多く入ってきていない日本は関税措置のような厳しい対応は取らない方向だ。そもそも主要な貿易相手国の中国と「関税を巡って貿易戦争に発展するとダメージが大きい」(政府関係者)。 ただ中国の過剰生産は脱炭素に有効な太陽光や風力発電関連製品でも指摘される。特に太陽光パネルは安価な中国製に押され、ほとんどの国内企業が撤退。次世代太陽電池などの実用化を急ぐ中で、中国対策は急務だ。 先進7カ国(G7)は中国を念頭に、製品の調達で環境対策など価格以外の要素も重視する基準の策定で合意。日本は同志国と具体化を急ぎ、特定国に依存しない戦略物資のサプライチェーン(供給網)構築を図る。(中村智隆)