20年ぶり再会の「元カノと結婚」した彼が語ること、お互いに「紆余曲折すぎた社会人生活」の末に選択
「どちらかが病気をしたり亡くなってしまったりすることを考えると、いずれは法律婚をしたほうがよいかもと思っています。でも、今の時点では祐樹さんと一緒にマンションを買ってローンを一緒に背負うことで結婚を実感しているところです」 結局、就農に挫折したという和美さんだが、現在は福祉事業所の畑で農作業ができている。服が汚れるので2日に一度の洗濯は和美さんが担当。平日夜の料理は祐樹さんが作っている。バランスのとれた仲良し夫婦に見えるが、学生時代から付き合い続けて20代で結婚していたらすぐに離婚していただろう、と2人は口を揃える。
■「他人は他人、自分は自分」 「僕は自分も含めて『人はこうあるべき!』という気持ちが強くて、それから外れた行動が若い頃は許せませんでした。経済力も生活力も足りない自分を認められず、ダメなところを他人に見せられなかったんです。でも、今は堀井さんが『隠さないでも大丈夫だよ』と思わせてくれます」 和美さんのことを名字で「堀井さん」と呼ぶ祐樹さん。「他人は他人、自分は自分」という大人の感覚がようやく身についたと語る。そのうえで言うべきことはちゃんと言葉にして伝えることも覚えた。
「学生時代に堀井さんと付き合っていたときに、食事中に興奮した堀井さんがナイフとフォークを嬉しそうに振り回したことがありました。それがどうしても嫌で、ついには別れてしまったのですが、今考えると嫌なものは嫌だと言えばよかったのです」 一方の和美さんは、若い頃だったら目移りして祐樹さんとは続かなかったと断言する。離婚や子育てを含めてさまざまな人生経験をして、自分が生活に求めるものがはっきりわかった今だからこそ、祐樹さん以上のパートナーは私にはいないと確信できるという。
「毎日、暖かい家で美味しいゴハンを一緒に食べられる。それが一番です」 和美さんと祐樹さんの出身大学の卒業生は、2人を引き合わせてくれたTくんも含めて、一流企業の管理職などのエリート層が多い。現実逃避や遅刻などの癖がある祐樹さんと和美さんはそこには属していない。 しかし、今では2人の家があり、健康的な食事と忌憚のない会話がある。農業や食、福祉などの分野を通して築いた心を許せる友だちにも囲まれている。お互いがこれからやりたいことを紙に書いて家の壁に貼り付け、夢中で語り合っている毎日だ。これも人生の成功だと言える気がする。
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大宮 冬洋 :ライター