日本生命は1.2兆円、積水ハウスは7200億円…日本企業が超大型買収に踏み切る“真の狙い”に背筋が伸びる
● 2050年、日本の人口は9500万人に減少 一部の株式アナリストによると、日本の住宅メーカーの事業規模に照らして考えた場合、7200億円もの買収によるリスク面は軽視できないとの慎重な見方もあるようだ。また、借り入れによる買収資金調達は、同社の信用リスクが上昇するという指摘もある。しかし、そうしたリスクを承知の上で、積水ハウスは買収を決めたのだろう。 50年に日本の人口は9500万人程度になると推測されている。23年10月1日時点では日本の人口は約1億2435万人だったので、ものすごい減りようだ。民間の有識者らで構成する人口戦略会議によると、「20年から50年にかけて、744の自治体(全国の4割)が消滅する可能性がある」という。 今すぐではないにせよ、日本のGDP(国内総生産)に占める個人消費の割合が低下する日は来るだろう。そのときになってようやく海外M&Aを志向したとしても、人材不足や、資金調達コストなどが阻害要因になり、思うように実行できないことは大いに想定される。 そのため、人員や財務内容などに余裕のある段階で、海外収益の比率を高めておく意義は大いにある。日本生命や積水ハウスの米国企業買収は、そうした先取り戦略の表れだと理解できる。 自動車や製薬などグローバルな競争が当たり前となった業種に加え、今後は保険や住宅、食品、生活用品など内需型の業界でも、海外進出を重視する企業は増えるだろう。米国に加えて、人口増加による経済成長が目覚ましいインドやベトナムなども狙い目だと予想される。 また、買収まではいかなくても、現地企業と資本・業務提携を結ぶなどして収益源を多角化するケースも増えるだろう。内需型でも縮小均衡に陥ることなく、持続的な成長を目指す日本企業――その嚆矢(こうし)として、日本生命の米国企業買収は示唆に富んでいる。
真壁昭夫