日本生命は1.2兆円、積水ハウスは7200億円…日本企業が超大型買収に踏み切る“真の狙い”に背筋が伸びる
● 1.2兆円で米国企業を買収する日本生命の危機感 日本生命が12月11日、米国のレゾリューションライフを約82億ドル(約1兆2000億円)で買収すると発表した。レゾリューションライフは、米国や英国、オーストラリアなどで既存の保険契約を買い取り、資産運用や事務の効率化で収益を確保するビジネス(クローズド・ブック事業)を行っている。 この案件の背景には、日本生命の経営陣の危機感があるだろう。同社をはじめとする国内の生損保企業は、創業以来、全国に営業網を敷いて販売員を大量採用し、各地の家庭に生命保険などを販売する体制を作り上げてきた。 顧客が払い込んだ保険料は、主に日本の国債や一般債(国債以外の債券)、海外の金融商品や不動産などで運用を行っている。近年こそ海外資産に資金を再配分することは増えたが、収益の大半はあくまで国内で獲得したものだ。報道によると、日本生命の基礎利益(本業のもうけ)に占める、海外事業のウエートは4%程度(23年度)しかない。 日本経済が右肩上がりで成長しているのであれば、国内型のビジネスモデルはワークするだろう。しかし、1990年初頭にバブルが崩壊すると資産価格は下落した。金利=国債の流通利回りは低下し、金融機関が国債などで資金を運用して、高い利得を実現することは難しくなった。 そして2008年をピークに国内の人口は減少に転じ、多くの分野で総需要が減少している。保険業も例外ではない。経済環境は一段と不確定さを増し、もはや国内の事業を中核に高い成長を目指すことは困難になりつつある。 日本生命は、24年度から3カ年の中期経営計画で2兆円以上の戦略投資枠を設定し、北米などでM&Aを進める方針だ。先行きへの危機感から、先手を打とうとする機運が高まっていることが分かる。
● 積水ハウスは7200億円買収で米住宅大手の一角に 日本生命は、35年度に国内保険事業で約1兆円、海外で約4000億円の基礎利益を上げる目標を掲げている。そのため今後も、海外での買収を始め投融資を積み増す方針だ。 米国は人口が増加し、さまざまな分野の需要が伸びている。足元では次期トランプ政権の政策リスクはあるものの、人口増加に加えて、AI関連など先端分野のイノベーションがあり、米国の経済成長率は相対的に高い。 日本企業が海外市場に出るためには、買収に伴う財務内容の悪化、経営風土の異なる組織の統合、法規制や政策への対応など多くのリスクを負担しなければならない。世界的に株価が高く、ドル高・円安の傾向が続く環境下で買収を行うと、後々、多額の減損を強いられる恐れもある。 そうした大きなリスクを負担してでも、米国市場での事業拡大を図る日本企業は増えている。積水ハウスもそうだ。今年1月、米住宅会社のM.D.C.ホールディングスを約49億ドル(当時の為替レートで約7200億円)で買収すると発表した。 生命保険と同様に、住宅市場も人口減少により縮小する。積水ハウスは今回の買収資金に関して、金融機関からの借り入れで賄ったようだ。国内の金融機関の資金需要先として、海外買収、あるいは不動産向けの融資などが主な案件になっている。 米国の住宅市場は、中長期的に成長する可能性は高い。積水ハウスは今回の買収によって、従来の西部、南部に加え、東部にも進出する。住宅の引き渡し数で全米第5位程度に浮上し、米住宅大手メーカーの一角に食い込む格好だ。