「6代目山口組・高山若頭の立ち寄り先までがメモに」山健組トップ裁判の攻防
特に耳について
ではどうやって断定したのか。決め手は顔認証システムだったという。 防犯カメラの人物と中田組長の顔のパーツの一致はもちろん、特に耳についてかなりの共通点が見られたことが大きかったとのことだ。これが一致するのは1000人に1人くらいの確率のようで、同じ特徴を持った中田組長以外の人物があの日あの場所にいる可能性は極めてゼロに近い――という主張だった。 ヤクザ関係者をざわつかせたのは、中田組長への質問内容だった。 中田組長の所持品の中にメモがあり、そこには“高山”という名前と、ある住所が記されていたという。その住所について調べてみると、6代目山口組の高山清司若頭がしばしば立ち寄っている場所であることが特定されたとのこと。これに関する一連の質問について中田組長は黙秘を貫いた。 「逮捕・起訴事実の通りならば、組長自らがヒットマンとなったということになり、当時ヤクザ業界には衝撃が走りました」 と、元山口組系義竜会会長の竹垣悟氏(現在は、NPO法人「五仁會」を主宰)。
意識された工藤會裁判
「さらに今回の裁判で、中田組長の所有していたメモから高山若頭までターゲットとして想定していたと検察が見ていることが明らかになりましたね。本気で狙っていなければそのような物証を保持している理由も必要もないということでしょうね。中田組長イコールヒットマンだ、という主張の傍証にしようとしたのでは」(同) 今回の裁判は裁判員裁判で、裁判長は検察の主張の間にも、「中田組長を犯人と決めつけているわけではない。冷静な判断を」と求める場面が何度かあったという。 「直接的な証拠がない中で検察が推認を重ねた主張を展開し、1審で死刑判決が下ったものの2審で無期懲役に覆った工藤會トップへの判決を裁判長は意識しているのかもしれません」(同) 人通りが多い住宅街で発生し、一般人を巻き添えにする危険も大いにあったこの事件に対する判決は今月31日に言い渡される予定だ。 今回の公判が開かれた神戸地裁の法廷は暴力団の襲撃など混乱を警戒し、傍聴人との間には防弾の衝立が立てられ、私服警官による警備もあり、物々しい雰囲気だった。裁判員らの静かな環境での冷静な判断が求められるところである。 デイリー新潮編集部
新潮社