クレーンは使えない…120トンの機関車をジャッキアップ JR貨物脱線から1週間 「ほぼ経験がないケース」で運転再開見通し立たず
薩摩川内市平佐町の川内駅で起きたJR貨物列車の脱線事故は、19日で発生から1週間を迎えた。線路から外れ、傾いた状態となった機関車をクレーンでつり上げる場所を確保できず、ジャッキを使用。復旧作業は難航している。JR鹿児島線川内-隈之城間は運転再開の見通しが立たず、事故原因も分かっていない。 【写真】〈別カット〉機関車と貨車の復旧作業に当たる作業員ら=18日午後4時50分ごろ、薩摩川内市
事故は12日午前3時ごろ発生。12両編成のうち、先頭の機関車と貨車2両が脱線した。JR九州とJR貨物は車両をレールに戻すなどし、これまでに10両を現場から移した。18日は残る2両の作業を進めた。 JR九州鹿児島支社の海老原毅支社長は17日の取材で「機関車が傾いたり、貨車の車輪が砕石に埋まったりと、ほとんど経験がないケース」と説明。復旧作業は難易度が高いとして「撤去が想定よりもどんどん遅れている」と明かした。 同社によると、脱線した際はジャッキで上げるかクレーンでつり上げて復旧させる。今回は十分な作業スペースがないことなどからジャッキを選択。車両のバランスを崩さないよう慎重に作業を進めている。 JR貨物によると、機関車は重量約120トン。1976年から走行している。事故時は年末の貨物増に伴う臨時便として運行した。 代替バスや、九州新幹線による川内-鹿児島中央間の振り替え輸送は当面続ける。19日は串木野-隈之城間の上下各1本も運休する。不通が長引く中、県によると、自治体や業界からの相談や要望は今のところ寄せられていない。鈴木圭祐交通政策課長は「県民の大事な移動手段。一日でも早く復旧させ、原因を究明してほしい」としている。
調査官を派遣し、17日までに計4日現地調査した運輸安全委員会は、1年をめどに報告書をまとめる。 ■原因調査分岐器が焦点 日本大学の綱島均特任教授(鉄道工学)の話 機関車が傾くのは珍しい。復旧作業が長引いているのはそのためだろう。現場の上には架線があり、線路横はのり面になっている。クレーンが使えたら時間はそれほどかからないが、この状況では難しい。作業員の安全を担保しつつ、100トンは超える機関車を動かすのは困難だ。調査のポイントは、分岐器が正常だったか否か。異常があればそれが原因だろう。正常であれば、分岐器を通過する際に車輪がレールを横に押す力が大きくなり、乗り上げた可能性もある。特に低速の場合起こりやすい。脱線痕を見れば分かるはずだ。
南日本新聞 | 鹿児島