<高校野球>ベスト16へ進んだ佐野日大の麦倉監督に宿る阪神タイガース魂
第99回全国高校野球選手権の栃木大会2回戦が14日、県内各所で行われ、元阪神の麦倉洋一監督(45)が率いる佐野日大は、今市工業と対戦、9-2の7回コールドで勝利してベスト16へ進出した。序盤は緊迫した展開だったが、3回に3連打に足を絡めて先取点を奪うと、相手の守備の乱れにもつけこんで4回に3点、5回に5点のビッグイニングを作って、9安打9得点で2試合続けてのコールドゲームで快勝した。波乱万丈の人生を歩んできた麦倉監督は、プロアマ両方で学んだ指導力で監督就任初年度に挑んでいる。そして、その胸のうちに宿っているのは、やはり熱いファンに叱咤激励されて鍛えられた阪神タイガース魂だった。 「楽しそうでしょう?」 真っ黒に日焼けした“監督1年生”の麦倉監督は顔を合わせるなり、そう言った。 試合前には、器用にノックをして、ベンチでは、時には熱く、時には冷静に、ジェスチャーをまじえながら指揮をとった。監督に正式就任して、まだ4か月だが、すっかり高校野球監督の姿が様になっている。 「今の子は、怒ってはダメなんです。いかにやる気にさせるか。難しいですが、選手に主体性を持たせないと上手くなりません」 今市工の変則サイドハンドに苦労したが、チャンスが生まれると強行、バント、盗塁を織り交ぜて攻略の糸口を作った。2試合連続のコールド勝利だが、チームの特徴は、5人のピッチャーを擁する巧みな継投策である。この日の先発は、背番号「11」の左腕、中山。新チームのキャプテンだったが、麦倉監督が昨年12月に監督就任することが決まると「ピッチャーに専念させたい」と異例のキャプテン交代をさせた投手だ。 ストレートは130キロちょっとで、カーブを軸にした多彩な変化球投手。生命線の制球に苦しみ、自らのバント処理のミスなどもあって5回には、2失点したがゲームは作った。5回のビッグイニングで7点差にすると6、7回は、背番号「18」の本格右腕、金久保にスイッチした。麦倉監督が“ストッパー”として期待する金久保が、最速137キロのストレートの球威で、2イニングを内野安打1本だけに押さえ込みゲームセット。1回戦では、背番号「1」の原田から、左腕の君島へとつないだ。 麦倉監督が、「いけいけ、走れ、走れで、点をとって、しっかりと継投で守り勝つ、競り勝つのが、うちの野球」と、思い描く、甲子園出場への勝利方程式の輪郭が整ってきた。