【浴室リフォームの落とし穴】数百万円かけて古い浴室をユニットバスにして大後悔 「浅い浴槽は逆に危険」のワケ
老朽化が目立ち、バリアフリーでもない我が家だが、住み慣れた自宅で最後まで暮らしたい──そんな願いを叶えるのがリフォームだが、数々の落とし穴が潜んでいる。大金を掛けたのに、かえって住みづらくなるケースが多いのだという。改築のプロが浴槽リフォームのNG項目を指南する。
リフォームしたことで生活が不便になるケースも
国土交通省の「建築物リフォーム・リニューアル調査」によれば、2023年に行なわれた住宅リフォームの件数は706万2950件。この5年間で50万件ほど増えた。 また、リフォームを実施した物件の31.4%は築年数が30年以上、実施者の年齢も70代が20.1%、60代が20%と続いた(2023年度住宅リフォームに関する消費者実態調査)。 一級建築士でリフォーム事情に精通する尾間紫氏が語る。 「子供の独立や定年後に住宅を住み替える『ダウンサイジング』が流行する一方で、長年住んだ自宅を改築し、最後まで暮らしたいという人が増えています」 リフォームの主な目的は老朽対策や将来の介護を見据えたバリアフリー化だというが、落とし穴が多数潜んでいると尾間氏は続ける。 「リフォームしたことで、かえって生活が不便になるケースが散見されるのです。数百万円かけたリフォームが無駄になってしまった、というケースも珍しくない」
浅い浴槽に交換したら風呂から出られない
とりわけ失敗事例が多いのが浴室だという。 断熱性能の高いユニットバスに替えることや、風呂場での転倒防止策を施すことは長く住める家作りにつながる。しかし、盲点がある。 昨年、古い浴室をユニットバスにリフォームした埼玉県在住のAさん(65)が語る。 「築40年以上の自宅の風呂はタイル張りで床が冷たく、昔ながらのステンレスの浴槽は底が深くて入浴時に何度も転倒しそうになりました。そこで100万円かけてユニットバスに改修し、転倒防止のために浅めの浴槽にしたのですが、肩まで浸かるには浴槽に寝転がる必要があり、起き上がるのに一苦労。浴槽も大きく湯船で体が浮いてしまい、浴槽の縁に掴まっていないと危ないのです。もっと慎重に検討するべきだったと後悔しています」 前出の尾間氏が言う。 「浅い浴槽の方が転倒せず安全だろうと考える人が多いですが、かえって体への負担が増しやすい。サイズが大きい洋式のバスタブのようなタイプは、全身で浸かるには仰向けに近い体勢で入浴することになる(イラスト参照)。足腰が弱ると起き上がることが難しく、浴槽から出るのに苦労します。最悪、溺れてしまうリスクもあります」 一般的に浴槽は50~55センチ程度の深さがあれば肩まで浸かれるという。 「通常の深さの浴槽で不安を感じる場合、踏み台や手すりの設置が効果的ですが、握力が弱ってくると手が滑りやすいので、普通の持ち手の手すりでは不充分です。手すりに滑り止めを施したり、縁を掴める形状の浴槽を選ぶと起き上がりが楽になります」(同前) 浴槽をリフォームする際はショールームで下見をするなど、無駄な改修にならないように情報収集をしておきたい。 ※週刊ポスト2024年11月22日号