内航海運、危機か転機か? 船員不足と老朽化が加速! 取り扱い量1割減の現実、日本の物流が直面する課題とは
日本経済を底上げする海の力
私たちの日常生活に欠かせない物資の多くは、日本国内の港湾間を船で運ばれている(内航海運)。輸入品のほとんどは海上輸送に依存しており、海外から運ばれた原材料は大規模な港に集約された後、地方の港へと配送されている。同様に、国内で製造された製品や生産された食料品も船によって日本全国に届けられている。 【画像】「なんとぉぉぉぉ!」 これが大手海運の「平均年収」です! グラフで見る(9枚) 船は陸上輸送と比較して、低コストで大量かつ重量のある貨物を効率的に運搬できる輸送手段だ。内航海運が主に輸送しているのは、 ・石油製品 ・金属 ・鉱物 ・砂利 ・石材 ・石炭 ・セメント などの産業基礎物資である。内航貨物輸送において、内航海運は貨物自動車に次ぐ第2の輸送手段で、全体の約4割を担っている。特に、産業基礎物資の輸送においては約8割を内航海運が支えており、まさに日本の国民生活と経済活動を支える重要なインフラといえる。 内航貨物輸送量の推移を見ると、2009(平成21)年のリーマンショック以降はほぼ横ばいで推移していたが、2020年の新型コロナウイルス感染症の影響により大幅に減少した。その後、緩やかな回復傾向が見られるものの、取り扱い貨物量は 「コロナ禍以前の9割程度」 にとどまっている。
未来に立ちはだかる深刻な課題
内航海運は、海上輸送の重要な役割を担う産業であるが、現在、存続に向けた深刻な問題に直面している。 最も大きな課題は、「船員確保の困難さ」だ。現在、船員の高齢化が顕著で、50歳以上の船員が全体の約5割を超えている。同時に、若年層の船員不足が深刻化しており、 ・長時間労働 ・船上生活 の特殊性が若者に敬遠されている。その結果、業界全体の人材確保は困難を極めており、後継者不足により存続が危ぶまれる事業者も少なくない。 次の課題は、船の「建造・代替・修繕に関する資金確保」だ。内航船の7割が船齢14年以上となり、老朽化が進んでいる。これにより、維持費や修繕費が増大し、採算性は悪化の一途をたどっている。新造船の建造には高額な投資が必要であり、多くの船主が更新をちゅうちょしている状況にある。 さらに、輸送需要の先細りも大きな懸念材料となっている。日本の人口減少にともない、需要の縮小が避けられない。今後の生産見通しも、減少もしくは横ばいと予測されており、内航貨物輸送量についても同様の傾向が見込まれている。 業界全体では、荷主企業の ・国内市場縮小 ・国際競争進展 を背景に、経営統合が進み、寡占化がさらに加速している。 これらの課題は、内航海運の未来に大きな試練を突き付けており、産業としての持続可能性が問われている。