SNSで“部族化”した?現代アメリカ 中間選挙前にヘイトクライム続発
アメリカで6日に投票が行われる中間選挙を前に、米国内では候補者の有権者に対するアピールが終盤を迎えている。米連邦議会下院の全議席(定数435)と上院の35議席(上院全体では100議席)、そして39州で知事のポストをめぐって、候補者や政党の間で激しい戦いが繰り広げられている。投票日直前に共和党と民主党の接戦が伝えられるのはアメリカの選挙時でよくあることだが、これまでの時代とは少し異なる現象も現れている。思想的に異なる他者や、異なるバックグラウンドを持つ者(人種、宗教、性など)に対し、議論を飛び越えて、暴力や暴言という手段を用いて自己主張しようとする風潮だ。中間選挙を前に、この類の犯罪が急増しているが、選挙後にこれらの犯罪がすぐになくなることもないだろう。 【写真】意味ない?米軍展開 「移民キャラバン」入国阻止は中間選挙で追い風となるか
アメリカで定期的に現れる不寛容な差別や暴力
ハロウィーンの日に仮装した姿をソーシャルメディアに投稿するのは、日本でも珍しくなくなった光景だ。しかし、米北西部アイダホ州にある公立小学校の職員らが投稿したコスチューム姿は、瞬く間に拡散され、ネット上で大炎上を引き起こした。 アイダホ州の州都ボイジー近郊にあるミドルトン・ハイツ小学校の教師や職員ら14人は先月31日、2グループに分かれてコスチューム姿で撮影した写真を投稿したのだが、メキシコ人を連想させる格好をしたグループと、レンガで作られた壁に扮したグループがそれぞれ集合写真を撮影していた。6人が並んで作った「壁」には、トランプ大統領のキャッチフレーズとなっている「アメリカを再び偉大に」という言葉まで書かれていた。 この投稿に対し「ヒスパニック系への差別を助長する」とネット上でこの小学校に批判が殺到。地元の教育委員会は「不適切な行為だった」と謝罪し、仮装に参加した14人を3日付けで停職処分にしたことを発表した。 アイダホ州のケースのように、ソーシャルメディアへの投稿が物議を醸すケースは時代を象徴するものだが、自らとは異なる他者に対して直接的な暴力に訴えるケースも、アメリカでは数年前から増加傾向にある。南北戦争後や、第二次世界大戦前、公民権運動が盛んだった60年代、9.11同時多発テロ直後など、アメリカでは異なる人種や政治信条を持った人々に対する暴力が頻発する時期が定期的に存在する。 日本ではあまり知られていないが、アメリカでは過去に群集心理の暴走によって、特定の人種が虐殺された歴史がある。南北戦争から数十年後の1891年、南部ニューオーリンズで地元の警察官を殺害した人物を市民らが拘束。容疑者とされたのは全て周辺に住むイタリア系アメリカ人で、群衆から殴る蹴るの暴行を受けた後に、公開絞首刑もしくは銃殺刑に処せられた。裁判が行われないまま命を落とした11人が、警察官の殺害に関与したかどうかは不明のままだ。1921年には中西部オクラホマ州のタルサで、白人の集団が黒人居住区を襲撃。飛行機まで使った攻撃では、空から火炎瓶が落とされ、黒人を狙った銃撃が繰り返された。赤十字社は当時、黒人の死者数を36人と発表したが、のちにオクラホマ州の歴史検証委員会は死者数を最大300人に大幅修正している。