最大の課題は「抑止力回復」 トランプ政権1期目の安保高官
米シンクタンク「ハドソン研究所」のナディア・シャドロー上級研究員にトランプ次期政権の外交・安全保障政策の課題を聞いた。 シャドロー氏は第1次政権で大統領副補佐官として「国家安全保障戦略」策定を主導した。主なやりとりは次の通り。 ―現在の国際情勢は。 非常に複雑だ。「侵略者の枢軸」「混沌(こんとん)のカルテット」と呼ばれるロシアと中国、イラン、北朝鮮の間で新たな協力関係が築かれている。1期目には存在せず、米国と同盟・友好国に多くの難題を突き付けている。 ―次期政権の課題は。 バイデン政権は欧州や中東地域で戦争の抑止に失敗した。トランプ政権が直面する最大の課題の一つは米国の抑止力回復だ。いかに抑止力を回復するか。必要な能力の適切な組み合わせは何か。米国と日本は協力してこうした問題に取り組むことができる。 ―同盟国との関係はどうなるか。 トランプ氏の狙いは、「公平な負担」を同盟・友好国が引き受ける協力関係を築くことにあると認識すべきだ。防衛費増額や軍事力強化を求めるだろう。また、経済面では「不公正な貿易の是正」を望んでおり、関税を利用し、競争をより公平なものとすることを目指す。それはまさに米国民が望んでいることだ。 ―抑止力回復に向け望ましい戦略は? 米国が超大国としての地位を確立するのは現実的ではない。あらゆる領域で「競争」するのでなく、重要分野での「圧倒的優位の獲得」というアプローチで政策の考え方が変わるだろう。部隊間の戦闘で敵を圧倒することを目指す作戦概念だが、戦略レベルで応用できないか検討している。 例えば、米軍の多くの兵器が(他国の)重要鉱物に依存している。米国と同盟国が共に生産を増やし、脆弱(ぜいじゃく)性を補う必要がある。