3モーター/829psのオープンGT マセラティ・グランカブリオ・フォルゴーレへ試乗 早朝のイタリアが極上体験
合計829ps 驚くほど敏捷なコーナリング
グランカブリオ・フォルゴーレに載る駆動用モーターは、合計3基。1基当たりの最高出力は407psだが、システム合計では829psへ制限されている。駆動用バッテリーが、それ以上の電力を供給できないためだという。 とはいえ、すこぶる速い。0-100km/h加速は2.8秒。アクセルペダルの反応は滑らかで、パワーを引き出しやすい。むしろ、むち打ちする勢いの加速力は不要だろう。 ブレーキペダルの感触も線形的で、効き具合を調整しやすい。連続するコーナーが、待ち遠しくなるほど。 アウディSQ8 e-トロンも3モーターで、トルクベクタリング機能も実装されるが、実際に楽しめる能力までは備えていない。テスラ・モデルS プレイドも同様だ。 しかしマセラティの味付けは絶妙。ステアリングホイールのセレクターを回すと、トルクベクタリングとスタビリティ・コントロールの効きを調整できる。 設定次第では、リアアクスルが回頭をアシストし、2340kgのボディを驚くほど敏捷に感じさせる。サイズがひと回り縮んだように思えるほど。充分な道幅があれば、動的能力を存分に発揮できる。 穏やかに公道を走らせれば、エアサスペンションがしなやかに伸縮し、乗り心地はスポーツカーとして例外的に優秀。ステアリングのレシオも直感的といえ、スムーズで狙い通りにフロントノーズを導ける。 段差を超えた時などに生じる、ボディの粗野な振動は最小限。少し速めのペースで駆け抜けるのが、最高に気持ちイイ。
高い理想を抱きたくなるオープン・マセラティ
ちなみに試乗車のボディカラーは、パーソナライズ・シリーズのフォーリセリエに設定される、オレンジ・デビル。非常に美しいが、悪魔級に高い。このシリーズの塗装色には、1万6000ポンド(約323万円)から3万ポンド(約606万円)の追加費用が必要だ。 荷室はだいぶ小さく、航続距離は強みとはいえず、英国価格は18万5610ポンド(約3749万円)から。この電動マセラティに、どの程度の需要があるのか、疑問がないといえば嘘かもしれない。 それでも、相当に魅力的なオープン・グランドツアラーだと思う。急速充電能力が優秀で、1度の充電でもっと遠くまで走れればと、高い理想を抱きたくなるほど。 早朝にソフトトップを開き、イタリアの湖畔を走らせるのは極上体験だった。V8エンジンのサウンドがないのは寂しいが、小鳥のさえずりを楽しめる。清々しい空気も存分に味わえる。スタイリングも、うっとりするほど美しい。
マセラティ・グランカブリオ・フォルゴーレ(欧州仕様)のスペック
英国価格:18万5610ポンド(約3749万円) 全長:4959mm 全幅:1957mm 全高:1353mm 最高速度:289km/h 0-100km/h加速:2.8秒 航続距離:418-447km 電費:4.1-4.5km/kWh CO2排出量:- 車両重量:2340kg パワートレイン:トリプル永久磁石同期モーター 駆動用バッテリー:83.0kWh(実容量) 急速充電能力:270kW 最高出力:829ps 最大トルク:137.4kg-m ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
イリヤ・バプラート(執筆) 中嶋健治(翻訳)