ドイツ暮らしで思う、ここはツーリングの理想郷ではないか!? しかし……
土地が育む、高性能なクルマとバイク
ドイツこそが、世界でもっともツーリングに適した理想郷ではないかと、僕(筆者:木下隆之)は断言しています。速度無制限の高速道路アウトバーンがあり、ワインディグでさえ法定速度は100km/hです。しかも飲酒運転(厳格な基準はある)にも寛容というのだから天国ですね。 【画像】ツーリングの理想郷(?)を画像で見る(4枚)
だからBMWやアウディなどの高性能ツアラーが誕生し、BMWモトラッドが高く評価されているわけです。速くなければアウトバーンを巡航できないし、操縦性が優れていなければワインディングを華麗にコーナリングできない。高性能バイクが生まれるのは必然なのです。 「いやいや、アメリカだって最高のツーリング天国ですよ」そんな反論もあろうかと思います。 確かに名作『イージーライダー』の世界観がそれを証明しています。ハーレーダビッドソンに乗る2人の若者が、カリフォルニア州からルイジアナ州まで旅をするあの映画が、いかにもなアメリカの気持ち良さを伝えています。それに反論する気はまったくないです。ただ、チョッパーでユルユルと旅をすることと、BMWのバイクで200km/h巡航することを比較するのは不粋です。 ドイツの素晴らしいところは、隣国に恵まれている事です。ヨーロッパの中央に位置しているドイツは、陸続きで9カ国に囲まれています。北から時計回りにデンマーク、ポーランド、チェコ、オーストリア、スイス、フランス、ルクセンブルク、ベルギー、オランダ。アウトバーンを飛ばせば、気軽に海外旅行できるのです。 しかも、国境はありません。宇宙飛行士の毛利衛さんの言葉を借りれば「国境は見えません」となります。公式的には国境はあるのですが、線が引いてあるわけでも国境警備の検問があるわけでもありません。自由に隣国に旅することができるのです。その意味でもツーリング天国ですよね。 しかし、不穏な情報が飛び交っています。ドイツ内務省が、不法移民の流入を防ぐために陸路の国境で審査をすると発表したのです。「テロや重犯罪といった深刻な脅威から守るため」を、国境警備を強化する理由としています。 ドイツでは不法移民排除などを宣言する右翼政党が躍進しています。先の東部州議会選で第一党になったことに端を発しています。きわめて政治的な政策ですが、僕はドイツで半地下のアパートを借りて、日本との二拠点生活を送っていることもあり、穏やかではありません。 僕が住むニュルブルクリンクは、30分も移動すればルクセンブルクに踏み入れることができますし、ベルギーとも近いのです。物価の安いルクセンブルクでカフェに立ち寄ることもありますし、安価なベルギーチョコを買うためにツーリングすることもあります。ですから、国境警備が強化されることは由々しき問題なのです。 せっかくのアウトバーンなのに、いちいちパスポートチェックも煩わしいですし、荷物を開け閉めさせられるのも面倒です。 もっとも、現時点(2024年10月23日現在)で、国境警備が強化される素振りはありません。今回もドイツ政府の大袈裟な公表のような気がしますが、このまま国境のないドイツでいて欲しいものです。そうでないと、せっかくの高性能なBMWを持て余してしまいますから……。
木下隆之