9月23日の阪神戦。巨人・大勢（左）は九回を締め岸田行倫と抱き合った

【球界ここだけの話】考え方ひとつで変わる－。巨人・大勢投手（25）の持つ明るさがリリーフ陣に好影響を与えていた。絶対的守護神として、4年ぶりのリーグ優勝に貢献した右腕が大切にするのはポジティブマインドだ。 【写真】試合前練習で笑顔の大勢。だからブルペン陣も明るい 「（シーズンを戦っていれば）きょうの状態は『やばいな』と思うときもある。でも（気持ちの中で）やばいと思ったらやばくなっちゃうので、『やばくない』と思うようにしている」 象徴する試合があった。1ゲーム差で迎え、試合に敗れればゲーム差なしとされる大一番、9月23日の阪神戦（甲子園）だ。1－0の九回に登板。中4日で上がったマウンドで高ぶる気持ちとは裏腹に、2死から得点圏に走者を背負ったピンチでは、冷静に気持ちを切り替えた。 「真っすぐがだいぶシュートしていた。登板間隔（中4日）が空くと体も切れてきて、腕が振れすぎちゃう。それに体の動きがアジャストできない時がある。そういうときこそ、今投げるボールでいかに抑えるか。その日の特徴を利用して、打者の打ちにくいところに投げようとしている」 最後は木浪をフォークボールで空振り三振に仕留め、27セーブ目をマーク。優勝につながる大きな1勝となった。身近で見ている救援陣も剛腕の考え方には目を細める。4年連続で50試合に登板する高梨は「メンタルが強い、弱いというよりマインドがいい。それでブルペンの雰囲気が全体的に明るくなっている」といえば、2年目の船迫も「投げるボールもえげつないけど、大勢が気づかないうちにポジティブなマインドになっているのが結果に影響している」と証言した。 試合を締めるクローザーは、僅差で緊迫した状況での出番がほとんど。計り知れない緊張感がある中でも周囲に緊張感を一切〝伝染〟させないのが大勢だ。ブルペンを担当する内海投手コーチは「どんな厳しい場面でもいつも通りふざけ倒していって、それで結果を残している。普段通りにやっていればいいんだと若い投手の見本になっている」とすごみを明かした。 右肩の違和感で5月に一時離脱こそしたが、9月30日現在、42試合に登板し、28セーブ、防御率0・90。背番号15の心に潜む、前向きな思考が圧巻の数字をたたき出した。（樋口航）