セルジオ越後「カタールW杯からわずか1年半で別のチームになったスペイン。日本代表もうかうかしてられないよ」
今、日本代表と対戦したらどんな試合になるだろう。果たして、日本の守備陣は耐えられるかな。思わずそんな想像をしてしまった。 先頃行なわれたEURO(欧州選手権)で、スペインが12年ぶり4度目の優勝を果たした。 スペインといえば、日本が2022年カタールW杯のグループリーグで対戦し、2-1で逆転勝利を収めた相手。中盤で細かくパスをつないでボールを保持するスペインに対し、日本は我慢の時間が長く続いたものの、後半開始早々に堂安と田中碧が得点を奪い、なんとか逃げ切った。 あれから1年半、今回のEUROでスペインが見せたのはまったく別のサッカー。実に新鮮だったよ。 以前のスペインはGKまで含めて徹底的にパスをつなぐサッカー。W杯(10年)、EURO(08年、12年)で優勝するなど一時代を築いた。でも、相手に研究され、徐々に勝てなくなった。カタールW杯でもグループリーグで日本に負け、決勝トーナメント1回戦でモロッコに負けた。 その教訓を生かし、今のスペインは以前ほどボールを持つことにこだわらなくなり、その分タテに速くなった。最大の武器は両サイドからの仕掛け。右は17歳になったばかりのヤマル、左は22歳のニコ・ウィリアムズ。今大会でのふたりの破壊力はとんでもなかったね。 特にヤマルはスピードだけじゃなく足元の技術もあって、パスも出せ、自ら点も取れる。17歳なのにもう体も出来上がっていて当たり負けしない。 思えば、ペレも17歳の時にW杯(1958年スウェーデン大会)で大活躍してブラジルの優勝に貢献したけど、ヤマルも末恐ろしい選手だよ。 ベスト8以降は接戦の連続だったとはいえ、優勝という結果をつかんだのはスペインにとって大きい。ヤマルとニコ・ウィリアムズ以外にも若手の主力が多く、選手層も厚い。次の26年北中米W杯でも当然、優勝候補に挙げられるだろう。 今回のEUROを見てあらためて感じたのは、やっぱりヨーロッパは今の世界のサッカーの中心だということ。進化のスピードが速い。練習期間の少ない代表チームの試合なのに、まるで欧州チャンピオンズリーグのようにレベルの高い試合が多かった。また、スペインに限らず有望な若手がどんどん出てくる。おかげで連日の深夜テレビ観戦も苦じゃなかった(笑)。 その点、同時期に開催されていたコパ・アメリカ(南米選手権)はかなり見劣りしてしまった。メッシ(アルゼンチン)、ハメス・ロドリゲス(コロンビア)、スアレス(ウルグアイ)といったベテランがいまだに健在どころかチームの顔だからね。 僕の母国ブラジルも厳しい(準々決勝で敗退)。ヴィニシウスやロドリゴはビッグクラブ(共にレアル・マドリード)に所属するいい選手だ。でも、ネイマールのような替えが利かない選手にはなれていない。18歳のエンドリッキもこれからの選手。まだまだ苦しい状況が続きそうだ。 最初に言ったように、カタールW杯のスペインと今のスペインはまったく別のチーム。次の26年W杯に向けて日本もうかうかしてられないよ。パリ五輪組(U-23代表)をはじめ、10代や20代前半の若手がどんどんA代表に名乗りを上げてほしいね。 構成/渡辺達也