介護報酬改定で訪問介護の事業所がなくなる時代が来る?訪問介護の代わりになるサービスとその金額とは
2024年度からの介護報酬改定により、訪問介護の基本報酬が引き下げられました。 訪問介護は、家での入浴などの身体介助や掃除や洗濯などの生活援助で、家で暮らす高齢者の生活を支えるサービスのひとつです。 身体介護で定期的に使っていた場合は「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」 もともと、訪問介護を行うヘルパーの人手不足が問題となっており、今回の基本報酬引き下げにより、訪問介護事業所の閉鎖が増えるのではと懸念されています。 訪問介護の身体介護や生活援助は、特に老々介護やひとり暮らしの高齢者の方にとって、重要なサービスのひとつとなっています。 このような訪問介護については、事業所がなくなったり人手不足で利用できなくなると、在宅生活が継続できなくなる可能性があります。 今回は、万が一の時に備え、訪問介護の利用が難しい場合にどういったサービスで代用ができるのかをご紹介していきます。 掃除や洗濯などの「生活援助利用」の場合 訪問介護を主に掃除や洗濯などの生活援助で利用している場合の代替案は、家事代行サービスの中で、比較的安価なシルバー人材センターの利用がおすすめです。 例:富山市シルバー人材センター 日常家事の手伝いとして、掃除や洗濯、片付けなどを行ってもらえます。 見積基準単価では、掃除・片付け・洗濯は、1回1,100円からとなっています。 シルバー人材センターのため、作業する方は、原則として60歳以上です。 長期的な依頼の場合、複数の方のローテーションになることがあります。 自己負担額が1割から3割ですむ訪問介護と違い、利用料金はどうしても高くなってしまいます。 しかし、担当者会議や計画書などの面倒と感じる手続き等がありません。 介護保険の手続きが面倒と感じていた方には、大きなメリットです。 他の大きな違いとしては、 地域の60歳以上の方が働き手のため知り合いの人が作業に来ることがある点や、 訪問介護と違って自立支援の観点から作業を行うわけではないところです。 自立支援の観点を取り入れたい方は一緒に作業を分担して行うなど、自分で意識して行っていく必要があります。 参照:公益社団法人 富山市シルバー人材センター「見積基準単価表(pdf)」 通所介護と併用利用の場合は「小規模多機能型居宅介護」がおすすめ 通所介護と訪問介護を利用していた場合、思い切って小規模多機能型居宅介護の通いと訪問を利用するために、事業所を変わってしまうのもひとつの手です。 今まで利用していた事業所を変わるのは不安がありますが、小規模多機能型居宅介護は通いと訪問で同じ事業所のスタッフが対応するため、早く事業所になじみ、きめ細かい介護を受けられます。 小規模多機能型居宅介護は、通所介護や訪問介護と違い、1回あたりいくらではなく月額定額のため、出費の計算がしやすいです。 また、 料金が高くなるから、 利用限度額を超えるから、 などの金銭的理由から利用を控えていた方にとって、小規模多機能型居宅介護の通いや訪問を何回使っても基本料金は一緒という点は、理想とする自宅介護を行う手だてになります。 利用料金の一例 同一建物に居住する者以外に対して行う場合、1単位1円と換算します。 ≪ひと月あたりの基本報酬≫ 介護1 1万458円 介護2 1万5,370円 介護3 2万2,359円 介護4 2万4,677円 介護5 2万7,209円 これに各事業所で、総合マネジメント体制強化加算(ひと月あたり1,000円)などの加算が付きます。 参照:WAMNET1-資料2(4)「介護給付費単位数等サービスコード表(案)小規模多機能型居宅介護サービスコード表(pdf)」 おむつ交換など身体介護で定期的に使っていた場合は「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」 週何日か定期的におむつ交換などの身体介護で定期的に訪問介護を利用していた場合は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(以下:定巡)で訪問介護を利用する方法もあります。 定巡は、訪問介護・看護が24時間対応してくれるサービスです。 おむつ交換や服薬確認などの定期的な訪問と、緊急時に状況に応じて訪問するサービスを組み合わせた内容になっています。 訪問介護と訪問看護を組み合わせて利用することもできますが、訪問介護単独で利用することも可能です。 注意点としては、要介護の方しか利用できないことや他の訪問介護事業所と併用できない点です。 訪問介護と違い、訪問回数で金額は変わらず月額定額です。 ≪利用料金例 1単位1円と換算≫ 介護1 5,446円 介護2 9,720円 介護3 1万6,140円 介護4 2万417円 介護5 2万4,692円 ここに、事業所ごとにサービス提供体制強化加算(750円)等が加わります。 今まで訪問介護と通所介護を利用していた方が、定期巡回と通所介護を併用する場合、定巡は月額定額のため、利用限度額内に通所介護の回数や時間を減らす等が必要になる場合もあります。 通所介護の利用を減らした分、定巡を利用し、おむつ交換や着替えなど介護者の身体に負担がかかりやすい介護の量を減らすようにしましょう。 定巡は24時間いつでも、利用者に何かあった際には状況を確認し、必要があれば訪問をしてもらえます。 老々介護やひとり暮らしの方など、緊急時への不安がある方にとって、何かあった際には対応をしてもらえるという安心感は、定巡の大きなメリットです。 参照:WAMNET 1-資料2(4)「介護給付費単位数等サービスコード表(案)小規模多機能型居宅介護サービスコード表(pdf)」 万が一に備えて訪問介護の代替方法と金額や体制を検討しておこう 訪問介護は、生活をしている空間に入っていくため、利用者とのかかわりが濃いサービスです。 そのようなサービスが突然利用できなくなると、在宅介護の継続が難しくなることが容易に想像できます。 万が一の時に備えて代替方法について知り、訪問介護を利用していたプランからどのように変えていくと良いのかを考えておくと、いざという時にあせらずにすみます。 また訪問介護を利用できなくなると、代替方法によってはかなり金額が上がる場合もありますので、お金の問題をどうするか、家族がどうカバーしていくかを考えておくことも必要です。 世の中の移り変わりが速くなっている今の時代、いろいろなサービスについて知っておき、家族や本人と共有しておくことは、在宅介護において重要です。 訪問介護を利用されている方、今後利用を考えておられる方は、訪問介護が利用できなくなった場合の介護について、家族や本人と一緒に考えておくことが転ばぬ先の杖になります。
manetatsu.com 佐々木 政子